講演情報
[O2-4]潰瘍性大腸炎に対する経肛門的直腸間膜切除術の手術成績と課題
吉村 幸祐, 上神 慎之介, 渡谷 祐介, 中島 一記, 新原 健介, 土井 寛文, 大毛 宏喜, 髙橋 信也 (広島大学大学院医系科学研究科外科学)
【目的】当科の潰瘍性大腸炎(UC)に対する経肛門的直腸間膜切除術(TME)の手術成績と課題を明らかにする.
【対象と方法】2017年1月~2024年4月に行ったUCに対する大腸全摘術のうち,2期分割手術及び3期分割手術の回腸嚢肛門吻合術60例を対象とした.肛門操作がTrans anal法のTME(TaTME)(TA群)と直視のTME(従来群)に分類し,手術成績を後方視的に解析した.手技のうち,2019年4月以降の腹部操作は完全腹腔鏡下,2020年3月以降の肛門操作はTaTMEとした.
【手技】 TA群は高載石位,従来群はジャックナイフ位で開始する.いずれも歯状線から粘膜を抜去して筋筒を作成する.粘膜を縫合閉鎖した後,TA群はGelPOINT PathⓇを装着し,同時に腹部操作を開始する.両群とも直腸内輪筋と外縦筋を切開し,後方で骨盤底筋膜を確認してTMEの層に入り頭側へ剥離を進める.これを左右に展開して前方は腹膜反転部,後方は仙骨前面まで全周性に剥離する.従来群ではこの後,載石位に変換して腹部操作を開始する.
【結果】対象60例中,TA群31例(51.7%),従来群29例(48.3%)であった.性別,BMI,癌合併,UC治療歴など患者背景に差は無かった.2期分割手術が36例(TA群19例(52.8%)),3期分割手術が24例(TA群12例(50%))であった.肛門操作時間中央値はTA群が長かった(121vs45分,P<0.01)が,腹部操作との同時進行で全手術時間はTA群で短縮した(352vs465分,P<0.05).尿道損傷などTaTMEに関連した合併症は認めず,Clavien-Dindo分類Grade3以上の術後合併症に差は認めなかった(TA群5例(16.1%)vs従来群9例(31%)).
【結語】肛門操作と腹部操作を別々に実施している施設,特に腹部操作を完全腹腔鏡下で実施する場合に,TaTMEは手術時間の短縮に有効で,且つ安全に実施可能である.肛門操作時間の短縮に向けた手技の習熟が今後の課題と考える.
【対象と方法】2017年1月~2024年4月に行ったUCに対する大腸全摘術のうち,2期分割手術及び3期分割手術の回腸嚢肛門吻合術60例を対象とした.肛門操作がTrans anal法のTME(TaTME)(TA群)と直視のTME(従来群)に分類し,手術成績を後方視的に解析した.手技のうち,2019年4月以降の腹部操作は完全腹腔鏡下,2020年3月以降の肛門操作はTaTMEとした.
【手技】 TA群は高載石位,従来群はジャックナイフ位で開始する.いずれも歯状線から粘膜を抜去して筋筒を作成する.粘膜を縫合閉鎖した後,TA群はGelPOINT PathⓇを装着し,同時に腹部操作を開始する.両群とも直腸内輪筋と外縦筋を切開し,後方で骨盤底筋膜を確認してTMEの層に入り頭側へ剥離を進める.これを左右に展開して前方は腹膜反転部,後方は仙骨前面まで全周性に剥離する.従来群ではこの後,載石位に変換して腹部操作を開始する.
【結果】対象60例中,TA群31例(51.7%),従来群29例(48.3%)であった.性別,BMI,癌合併,UC治療歴など患者背景に差は無かった.2期分割手術が36例(TA群19例(52.8%)),3期分割手術が24例(TA群12例(50%))であった.肛門操作時間中央値はTA群が長かった(121vs45分,P<0.01)が,腹部操作との同時進行で全手術時間はTA群で短縮した(352vs465分,P<0.05).尿道損傷などTaTMEに関連した合併症は認めず,Clavien-Dindo分類Grade3以上の術後合併症に差は認めなかった(TA群5例(16.1%)vs従来群9例(31%)).
【結語】肛門操作と腹部操作を別々に実施している施設,特に腹部操作を完全腹腔鏡下で実施する場合に,TaTMEは手術時間の短縮に有効で,且つ安全に実施可能である.肛門操作時間の短縮に向けた手技の習熟が今後の課題と考える.