講演情報

[O21-3]機械学習による直腸癌術後縫合不全に関する検討

栗山 翔1, 山田 岳史2, 上原 圭2, 進士 誠一2, 松田 明久2, 横山 康行2, 高橋 吾郎2, 岩井 拓磨2, 宮坂 俊光2, 香中 伸太郎2, 小澤 直行1, 塚田 勝彦1, 松井 隆典2, 林 光希2, 吉田 寛2 (1.本庄総合病院外科, 2.日本医科大学付属病院消化器外科)
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【緒言】直腸癌術後縫合不全は手術の技術,デバイスが改善した現在でも10%程度の確率で発症し,場合によっては致命的になる重要な合併症の一つである.危険因子として低栄養,放射線治療後,糖尿病や閉塞性大腸炎などがあげられる.末梢血好中球-リンパ球比(NLR)などは簡便な慢性炎症のマーカーであり,担癌患者の予後因子であるが,手術の短期成績との関連は明らかではない.また,機械学習の医療への応用は特に画像認識の分野では一定の効果をあげており,予後予測,治療効果予測等に関しても検討されている.
 【対象と方法】対象は2011年4月から2021年2月までに根治切除,DST吻合を施行した直腸癌の患者.患者の基礎疾患,BMIなどの臨床情報,NLRなどの炎症性マーカーと縫合不全の発症に関して検討した.データをtraining setとvalidation setに分けて,決定木を基にした機械学習アルゴリズムであるランダムフォレストを用いて縫合不全発症の予測における特徴量重要度などを算出した.
 【結果】対象は173例.男性が108例,年齢中央値は70歳(32−89),糖尿病合併症例が36例(20.8%),閉塞症例が19例(10.9%)であった.縫合不全は29例(16.2%)に認めた.ランダムフォレストでの縫合不全の発症予測に最も重要であったのはリンパ球-単球比(LMR)で,次いで血小板-リンパ球比(PLR),BMIであった.一方,糖尿病や閉塞の重要度は高くなかった.縫合不全発症予測のAccuracyは0.81で,ROC曲線で検討したところAUCはtraining setで0.79,validation setで0.76であった.
 【考察】炎症性マーカーが縫合不全発症に重要な因子であることが示唆された.担癌患者においては癌による慢性炎症の存在が考えられ,それが縫合不全発症に影響している可能性がある.また,術前BMI高値も縫合不全発症に影響があり,術前減量が縫合不全発症抑制に有効である可能性がある.