講演情報
[P20-2-1]当院で経験したHAMN(High-Grade Appendiceal Mucinous Neoplasm)の一例
上野 綸, 吉松 和彦, 井上 貴裕, 神原 啓伸, 堀 昌明, 佐伯 晋吾, 北川 集士, 峯田 修明, 古谷 圭, 矢野 修也, 東田 正陽, 岡田 敏正, 遠藤 俊治, 藤原 由規, 上野 富雄 (川崎医科大学消化器外科学)
はじめに,High-Grade Appendiceal Mucinous Neoplasm(高異型度虫垂粘液性腫瘍:以下HAMN)は2019年のWHO分類第5版において虫垂に発症する上皮性腫瘍の中で粘液を有する腫瘍の一つとして記載されている.本邦では大腸癌取り扱い規約第9版において虫垂上皮性腫瘍の分類はLAMNと良性上皮性腫瘍と悪性上皮性腫瘍に分類されており,HAMNの概念は今後記載されることが予想される.症例は55歳,男性.下腹部痛を自覚し,近医を受診した.その際,感染性腸炎と診断され帰宅した.その後症状増悪を認め,翌日当院救急科を受診した.精査の結果,虫垂,穿孔による腹膜炎と診断された.同日,腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.虫垂は炎症性に後腹膜に癒着していたが剥離可能であった.虫垂根部で切離した.術後は腹膜炎によるイレウスの改善を待って,術後6日目から食事を再開した.術後合併症なく,16日目に退院した.病理学的組織検査では先端部の虫垂壁はほぼ粘液成分で占めており,一部リンパ球を含む炎症性細胞が浮遊していた.根部は上皮の増生を伴っており,一部異型を伴う上皮からの粘液産生像を認め,HAMNと診断された.術後18ヶ月が経過し,無再発生存している.HAMNを医学中央雑誌で検索すると,1983年から2022年までに2例のみの報告であった.稀な疾患であり,文献敵な考察も交えて報告する.