講演情報
[P6-1-7]食道癌・直腸癌の同時性重複癌に対し,一期的にロボット支援下切除を施行した1例
宮崎 俊哉, 周東 宏晃, 尾澤 毅, 箱崎 悠平, 齋藤 一幸, 三ツ井 崇, 竹下 恵美子, 奥山 隆, 吉富 秀幸 (獨協医科大学埼玉医療センター外科)
症例は73歳,男性.既往は高血圧症で降圧剤の内服のみ.血便を主訴に前医を受診.下部消化管内視鏡検査でS状結腸に2型腫瘍,直腸S状部に1型腫瘍を認め,生検にてそれぞれ腺癌と診断されたため,精査・加療目的に当科紹介となった.また,当科紹介後に施行された上部消化管内視鏡検査では,門歯列より39cmの食道に2型腫瘍を認め,生検にて扁平上皮癌と診断された.精査の結果,術前診断は食道癌cT3N2M0 c-stage3,S状結腸癌cT3N0,直腸癌cT3N0M0 c-stage2aであった.治療計画は上部・下部グループ間での相談のうえ,術前化学療法(NAC)DCF(docetaxel+cisplatin+5-fluorouracil)3コース施行後に根治手術を行う方針とした.NAC終了から3週間後,一期的にロボット支援下による縦隔鏡下食道亜全摘術 3領域郭清+高位前方切除術D3+回腸人肛門造設術を施行した.術中合併症は認められず,手術時間902分,出血量105ml,輸血なしで手術は終了した.術後経過は良好で第14病日に軽快退院となった.病理結果は食道癌:ypCR,S状結腸癌:pT3N0,直腸癌:pT3N0M0 p-stage2aでいずれもR0手術であった.術後の補助化学療法は病理結果と術後の摂食状態を理由に実施していない.人工肛門の閉鎖は,術後再発のないことを確認し,体力の回復を待って術後8ヶ月で施行した.術後21ヶ月を経た現在まで再発徴候は認められず,通常の日常生活を過ごしている.通常の開胸を伴う食道切除術は侵襲も大きく,重複癌では二期的切除術が選択されることが多い.縦隔鏡を用いた食道切除術は通常の食道切除術に比べ,侵襲は小さく条件を選べば他臓器同時切除も可能である.今回,食道癌と直腸癌の同時性重複癌に対し,一期的にロボット支援下で同時切除を施行し,術後経過も良好であった症例を経験したので報告する.