講演情報
[P22-2-3]診断に難渋した肛門周囲扁平上皮癌の一例
岡野 美穂, 安山 陽信, 原 豪男, 畑 知樹, 高山 治, 金 鏞国, 長谷川 順一 (市立貝塚病院外科)
はじめに:大腸外科の日常臨床では,肛門近傍の扁平上皮癌は,肛門管癌由来の癌を第一に考えることが多い.今回我々は,皮膚由来の扁平上皮癌が肛門近傍にできた症例を経験したので報告する.症例は80代男性である.肛門周囲に圧痛を伴う腫瘤を数か月前から自覚していたが,その一部が自壊したため,近医を受診した.近医にて肛門周囲膿瘍もしくは痔瘻との診断で,自壊部分を切開排膿したところ,皮下に腫瘍を認め,その生検結果にて扁平上皮癌との診断にいたり,当院外科紹介となった.来院時検査所見では軽度炎症反応を認めるのみで,腫瘍マーカーは正常範囲であった.肛門の7時方向のややはなれたところに自壊部分をみとめ,皮膚は3cmほど切開されており表皮の下に白色腫瘍を認めた.切開創から浸出液が漏出し,悪臭も伴っていた.CTおよびMRI所見っでは,肛門右後方に楕円形の腫瘍をみとめ,右肛門挙筋への浸潤が疑われた.肛門挙筋浸潤をうたがう悪性腫瘍で,切開創のコントロールがつかないため,外科的切除となった.手術は,ロボット支援下直腸切断術,肛門周囲合併切除,皮弁形成術であった.術後経過は良好で略治退院となった.最終病理結果は,腫瘍と肛門管は連続しておらず,周囲の脂肪織にとどまった扁平上皮癌であった.若干の文献的考察を加えて報告する.