講演情報

[O10-1]局所進行直腸癌に対するTotal Neoadjuvant Treatmentの短期成績

新名 一郎, 宮崎 康幸, 根本 学, 金丸 幹郎, 樋口 茂輝, 佛坂 正幸 (潤和会記念病院)
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【背景】局所進行直腸癌に対する術前治療として,Total Neoadjuvant Treatment(TNT)は局所再発や遠隔転移の制御に優れるため欧米では標準治療の一つとなっており,本邦でも導入されはじめている.有効な方法と考えられるが,定型化されたプロトコールはなく,確立された治療開発が待たれる.【目的】当院でTNTを施行した症例を後方視的に解析し短期成績を報告する.【対象と方法】当院ではTNTとしてmFOLFOX6療法を6コースinduction chemotherapyとして施行後,放射線化学療法としてS1内服併用,全骨盤照射41.4Gy(1.8Gy×23fr)を施行している.原則としてTNT後手術を行なう計画としている.当院で2019年9月から2023年8月までにTNTが施行された11例を解析する.【結果】年齢の中央値は60歳(45-71歳),性別は男性/女性:6/5であった.腫瘍局在はRa/Rb:2/9,cStageはIIIa/IIIb/IIIc:1/3/7であった.当院はT4もしくはN1b以上の症例は主にmFOLFOX6療法による術前化学療法を行なっているが,今回TNTを選択した主な理由は①側方リンパ節転移がある/②人工肛門拒否/③Vulky/④EMVI陽性/⑤低分化腺癌:6/3/3/3/1(重複あり)であった.TNTの副作用として好中球減少(Grade2)3例,肺炎(Grade2)1例,じんま疹(Grade2)1例,下痢(Grade2)1例を認めた.TNT終了後の治療効果判定で3例CRと判断した.この3例は肛門温存手術の希望が強く,十分なinformed consentのもとwatch & waitとした.手術を施行した8例は肛門温存手術/腹会陰式直腸切断術:2例/6例で5例に側方リンパ節郭清術が行なわれた.肛門温存手術の2例は縫合不全を認めた.1例に術後6ヶ月後肺転移を認め,切除を行なったが,その後骨転移を認め,術後4年8ヶ月担癌生存中である.そのほかの症例はwatch & waitの3例を含め無再発生存中である.【結語】局所進行直腸癌に対するTNTは比較的安全に導入可能であったが,肛門温存手術に関しては,縫合不全を認め注意が必要である.局所再発制御と遠隔転移制御に期待しているが,観察期間の中央値が1年7ヶ月と短く,今後慎重な経過観察が必要である.