講演情報

[P12-1-3]当院における超高齢者大腸癌手術症例についての検討

石川 慧, 原口 直紹, 南 壮一郎, 福田 泰也, 額原 敦, 福田 周一, 古賀 睦人, 肥田 仁一, 木村 豊 (近畿大学奈良病院)
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【はじめに】近年の高齢化に伴い,当院においても超高齢の大腸癌手術症例が増加している.超高齢者は併存疾患の増加や臓器機能の低下に伴い,周術期合併症リスクの増加が懸念される.
 【対象・方法】超高齢者を85歳以上と定義した.2014年から2023年に当院で大腸癌に対して腸管切除を伴う腫瘍切除術を施行された85歳以上の患者80例を対象とし,その背景や周術期因子,術後成績について後方視的に検討した.
 【結果】対象症例は男性27例,女性53例で,手術時年齢の中央値は88歳(85-98)であった.腫瘍の占拠部位は右側46例,左側34例であった.腫瘍の深達度はT0-1が6例,T2以深が74例で,所属リンパ節転移は陰性が50例,陽性が30例であった.術前のHb値の中央値は11.5 g/dl(8.1-15.9)で,Alb値の中央値は3.8 g/dl(1.4-4.5)であり,全身状態の不良な患者が含まれていた.アプローチ方法は腹腔鏡下が67例,開腹が13例であり,13例の内開腹移行が2例であった.手術時間は178分(58-420),出血量は29ml(0-538)であった.人工肛門造設術を併施した症例が15例あり,うち14例が永久人工肛門であった.術後合併症の発生は19例に認め,その内Clavien-Dindo分類Grade IIIa以上の重症合併症は5例であった.4例は大腸癌穿孔に対する緊急開腹手術症例であり,1例は腹腔鏡下手術での結腸癌皮膚浸潤切除部の創感染であった.術後の初回排ガス確認までの日数の中央値は3日(1-13),術後食事再開までの日数の中央値は4日(3-16),術後在院日数の中央値は12日(6-88)であった.術後化学療法が実施された症例はなく,再発は12例で認められた.【結語】超高齢者の大腸癌は大部分が進行癌で,術前の全身状態や予備能を考慮した術式選択がなされていた.腹腔鏡下手術も多く実施されていたが,重篤な合併症の発生はわずかであった.