講演情報

[O17-3]一時的回腸人工肛門造設後 Outlet obstructionの発症状況と当院の造設手技

安岡 宏展, 小森 康司, 木下 敬史, 佐藤 雄介, 大内 晶, 清水 泰博 (愛知県がんセンター)
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【はじめに】
近年,下部直腸癌に対して腹腔鏡手術の進歩や経肛門的直腸間膜全切除(TaTME)やロボット支援下手術などの新規術式の登場により肛門温存術式が普及するにつれて,縫合不全予防や肛門機能改善を待つ目的で一時的回腸瘻を造設する機会が増えてきた.人工肛門関連合併症には,皮膚粘膜障害・ストーマ壊死・ストーマ排液過多・傍ストーマヘルニアなど多岐にわたるが,Outlet obstructionと呼ばれる腸閉塞は食事開始のみならず,術後補助化学療法開始の遅延や,想定外の人工肛門閉鎖を与儀なくされることもあり注意が必要である.Outlet obstructionには厳密な診断基準が存在しないため,癒着性や麻痺性イレウスとの鑑別は困難であり本症自体の認識も重要であると考える.宗像らは58例中13例(22.4%)でイレウスを発症し,Outlet obstructionは6例(10%)と報告している.
そこで,今回われわれは一時的回腸瘻造設後にOutlet obstructionをきたした症例を振り返り,当科で行っているOutlet obstruction予防対策を報告する.
【手技】
鏡視下手術では,必ず完全に脱気した状態で造設する.正中の開腹創の皮下,腹直筋鞘をそれぞれ2ヶ所ずつ鉗子で把持し,正中に牽引しながら貫通孔を作成する.皮膚,筋鞘,腹膜にズレが生じないようにすることで腹壁に対し垂直な貫通孔が作成できる.皮膚は円形に切開し,腹直筋前鞘を縦切開,腹直筋をsprit,後鞘・腹膜も縦切開し2横指程度の広さを確保する.腹直筋前後鞘,腹膜を8ヶ所縫合した上で,挙上した回腸と固定する.その後腸管を反転して皮膚と固定する.
【結果】
2013年から2023年に直腸癌に対し330例で一時的回腸人工肛門造設をおこなった.造設においてOutlet obstructionは3例(0.9%)であり発生頻度は低かった.
【結語】
当院での回腸人工肛門造設術の手術手技動画を供覧し,その治療成績を示す.