講演情報

[R11-5]進行下部直腸癌に対する当院の短期放射線化学療法SCRT+TNT(total neoadjuvant therapy)の適応と治療成績

古出 隆大, 松木 豪志, 一瀬 規子, 中島 善隆, 岡本 亮, 仲本 義彦, 柳 秀憲 (明和病院)
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はじめに:
局所進行下部直腸癌に於て切除可能例(T3N0-1)と異なり切除境界又は不能例(T4orN2)では局所制御率,遠隔転移再発率とも不良であり術前療法の個別化が議論されている.
方法:
当院では切除可能例にはSCRT(25Gy10fr)を,切除境界又は不能例には2011年まで術前長期化学放射線療法(45Gy/25fraction/+S-1+CPT-11)を施行していたが,合併症率と遠隔転移再発が高率であった為2012年より,total neoadjuvant therapy(TNT;FOLFOXorSOX)+SCRTを施行するレジメンを主としている.一方,近年骨盤内を占拠するBulky症例やInduction chemotherapyにて効果不良例に対してはSCRTでは効果不十分と考え長期化学放射線療法(LCRT)を選択する個別化治療戦略にとっている.
今回2012年~2020年に経験した111例の内,stage4を除き,TNT+SCRTを用い長期経過を追えた72例の成績を評価し,TNT+LCRT選択した12例の成績と比較検討した.
結果:
TNT+SCRT:年齢中央値67歳(22-82歳),男女比45:27,腫瘍径は4cm,肛門温存手術率94.4%,側方郭清は52.4%,他臓器合併切除は12.5%に施行していた.成績ではpCR率13.9%,3-yr/5-ysLFS;89.4/86.8%,RFS;72.4/69.9%,OS;95.2/80.2%,生涯肛門機能率73.6%と2011年までのLCRT+IRISの成績(5-yr LFS;79.4%,RFS;60%,OS;75.8%)より良好な遠隔転移制御率であった.
一方,TNT+LCRT症例では腫瘍径cmで肛門温存手術率66.6%,他臓器合併切除は33.3%に施行されており,観察期間は有意に短いが,成績ではpCRは1例8.3%,3-yrLFS;91.7%,RFS;74.1%,OS;61.1%,生涯肛門機能率60.0%であった.
結語:
切除境界または切除不能例に対するTNTを用いた個別化治療戦略は遠隔再発が高率な高度進行直腸癌に対して有用である可能性が示唆された.但し予後不良症例も散見され更なる全身治療を検討すべきと考えられた.