講演情報

[P13-1-6]直腸癌術後再々発症例に対する恥坐骨合併切除を伴う骨盤手術の実際―形成外科による皮弁再建の重要性―

松井 隆典1, 山田 岳史1, 上原 圭1, 進士 誠一1, 松田 明久1, 高橋 吾郎1, 岩井 拓磨1, 武田 幸樹2, 栗山 翔1, 宮坂 俊光1, 香中 伸太郎1, 菊池 悠太1, 林 光希1, 吉田 寛1 (1.日本医科大学付属病院消化器外科, 2.日本医科大学武蔵小杉病院消化器外科)
PDFダウンロードPDFダウンロード
直腸癌術後局所再発率は原発巣手術レベルの向上と術前治療の発達とともに減少傾向にあるものの,一度起これば疼痛・出血・腸閉塞などを引き起こすことで患者のQOLを下げる難治性疾患であり,苦しむ患者は決して少なくない.手術は骨盤内臓全摘術術や骨性骨盤壁合併切除など過大な手術が必要になる事が少なくなく,術後の合併症率低減やempty pelvis syndrome(EPS)を回避するために形成外科による筋皮弁再建は極めて重要になる.
今回,下部直腸癌の原発巣に対しtotal neoadjuvant therapy(TNT)後に根治切除を行った後の局所再々発に対し恥坐骨合併切除でR0切除を達成し,右ALT筋皮弁にて骨盤底形成を行った1例を経験したので,筋皮弁再建の適応と実際も含め紹介する.症例は43歳男性.前医で局所進行下部直腸癌の診断で,短期放射線照射+CAPOXによるTNTを施行後に,前立腺合併腹会陰式直腸切断術を行った.術後,膀胱尿道吻合の難治性縫合不全をきたし,回腸導管造設術を行っている.術後8ヶ月で局所再発を指摘され,膀胱切除を伴う骨盤内臓全摘+左薄筋皮弁再建を行ったが,術後4ヶ月で局所再々発と診断され当院紹介受診となった.
腫瘍は左恥骨結節~下肢に接するものと左坐骨結節に接するものが雪だるま状となり皮膚表面からも蝕知した.また左外腸骨リンパ節転移も認めた.恥坐骨・S5以下仙骨合併切除・外性器合併切除を伴う腫瘍切除,左外腸骨~ソケイリンパ節郭清を施行し,形成外科により,左ALT flapによる筋皮弁再建を行った.
恥坐骨合併切除では骨盤輪が断裂するため骨盤の動揺が少なからず出現するが,歩行のために必ずしも必要ではなく,骨軟部腫瘍の領域でも再建は不要とされている.しかし,骨盤底が完全に破壊されることによるEPSの出現は必発であり,少しでもQOLを保つために筋皮弁再建は有用と考える.また恥坐骨併切除では両側の内転筋群を広く剥離するため内転筋の障害が必発のため,術後歩行リハビリも重要である.