講演情報
[R20-6]肛門管-バルトリン腺瘻に対しSubctaneous Incision of Fistula Tract and Internal Sphincterotomy(SIFT-IS)を行った1例
小泉 岐博1,2,3, 森本 幸治2, 久保田 至2, 大塚 新一2, 久保田 和2, 田村 周三2, 菅又 奈々2, 左雨 元樹2, 金澤 周2 (1.北千住大腸肛門クリニック, 2.西新井大腸肛門科, 3.日本医科大学消化器外科)
【はじめに】バルトリン腺は腟の左右にある分泌腺である.開口部の閉塞により発生するバルトリン腺嚢胞は2%の女性が一生涯に経験する頻度の高い疾患である.バルトリン腺嚢胞の合併症として肛門管あるいは直腸との間の瘻孔形成があるが,両者は同一の疾患群として扱われていることが多い.【症例】30代,女性.2年前から左側のバルトリン腺嚢胞を繰り返し,他院で保存的治療を行っていた.左外陰部の腫脹・疼痛とともに肛門から排便時に肛門から排膿を伴うようになり来院した.肛門鏡検査で肛門管の12時方向に慢性裂肛を認め,裂肛から排膿を認めた.経肛門的超音波検査では肛門管から内外括約筋を貫く瘻管を認め,左外陰部皮下の嚢胞性腫瘤に交通していた.慢性裂肛を一次口とする痔瘻がバルトリン腺嚢胞に交通し,バルトリン腺膿瘍を形成したものと診断した.腰椎麻酔下に伏臥位にて手術を施行した.瘻管はSubctaneous Incision of Fistula Tract and Internal Sphincterotomy(SIFT-IS)法にて処理した.バルトリン腺膿瘍はドレナージを行い,膿瘍内腔の掻把を行った.術後は肛門からの排膿は消失した.ドレナージ創の治癒遷延があったため術後4か月後に再掻把を行い,創部は3週後に閉鎖した.再手術から5ヶ月目のMRI検査において瘻管および膿瘍の消失を確認した.【結語】本症例は痔瘻によって肛門管とバルトリン腺が交通していたため痔瘻手術にて治療可能であった.一方,直腸とバルトリン腺の瘻孔形成には解剖学的に痔瘻の関与は考えにくい.また,直腸膣瘻を形成し治療に難渋することがある.それぞれは成因が異なる別の疾患と考えるべきであり,おのおのに適切な術式を選択する必要がある.