講演情報
[SY2-8]ロボット支援直腸癌手術におけるSSI対策とその成績
井上 透1, 西居 孝文1, 井関 康仁1, 潤也 西村1, 日月 亜紀子3, 田中 裕人1, 福岡 達成2, 渋谷 雅常2, 西口 幸雄1, 前田 清2 (1.大阪市立総合医療センター消化器外科, 2.大阪公立大学消化器外科, 3.住友病院消化器外科)
【目的】直腸癌の手術においては手術部位感染(SSI:Surgical Site Infection)のリスクが高いことが知られている.我々はSSIガイドラインを参照にSSI対策に取り組んできたが,ロボット支援下手術(以下ロボット手術)がSSIの発生に及ぼす影響を検討した.【対象】当院では2018年からロボット手術を開始し,2019年は直腸癌手術の21%であったが,2021年には62%の手術をロボット支援下でおこなっており,2019年からの4年間手術総数は164件であった.同時期におこなわれた腹腔鏡下手術(以下LAP手術)92例を比較対照とし検討を行った.【方法】当院で施行しているSSI対策方法は,術前日の抗菌薬内服,術中創部の汚染予防,消化管内容物による汚染機器の交換,3時間毎の手袋交換,創閉鎖における皮下洗浄とモノフィラメント吸収糸による真皮埋没結節縫合,血糖コントロールチームによる周術期血糖管理,術中体温の維持などを施行している.直腸癌手術症例256例につきSSI発生に関与する因子(年齢,性別,手術部位,手術手技,手術時間,出血量,人工肛門の有無,喫煙,BMI)について検討を行なった.【成績】直腸癌手術全体のSSI発症率は12.9%であり,うち表層切開創SSI:4.3%,臓器体腔SSI:8.6%で,縫合不全の関与が大きかった.LAP手術のSSIは15.2%,ロボット手術のSSIは11.5%であり有意差は認めないが減少を認め,特にロボット手術での表層切開創SSIの発生は3%と非常に少ない結果であった.直腸切断術ではLAP手術3例中2例にSSIを生じていたが,ロボット手術では19例中2例のみの発生であった.LAP手術では手術時間中央値を超えるものにSSIの発生が多かったが,ロボット手術では手術時間との関連は認めなかった.出血量との関連は認めなかった.【まとめ】 今回の検討では直腸癌手術全体のSSIの発生率に有意差を認めなかったが,直腸切断術におけるSSI発生の低下からは,ロボット支援手術による直腸癌手術のSSI低下が今後期待されうる可能性が考えられた.