講演情報

[P1-1-5]大腸癌手術におけるcovering ileostomyと縫合不全重症化の予防効果の検討

武田 幸樹, 山田 岳史, 上原 圭, 進士 誠一, 松田 明久, 横山 康行, 高橋 吾郎, 岩井 拓磨, 宮坂 俊光, 香中 伸太郎, 吉田 寛 (日本医科大学付属病院消化器外科)
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【背景】Covering ileostomyは大腸癌の手術において,縫合不全の重症化を予防するのに有用である.その一方で,covering ileostomyを造設しても再手術が必要となる縫合不全症例が一定数存在する.Covering ileostomyを造設しながらも,縫合不全の重症化を予防できなかった症例を検討した.
 【方法】2015年1月から2023年12月まで,当科で予定の大腸癌手術と同時にcovering ileostomyを造設した症例の周術期成績を検討した.
 【結果】対象は120例(男性:90例,女性:30例).腫瘍の主座は,横行結腸:1例,下行結腸:1例,S状結腸:5例,RS:11例,Ra:42例,Rb:60例であった.21例(17.5%)で縫合不全を認めた.年齢,性別,BMI,糖尿病の有無,Charlson comorbidity index,前治療の有無,主座,深達度,リンパ節転移の有無,遠隔転移の有無,狭窄の有無の11因子につき縫合不全のリスク因子を検討.多変量解析において,Rb症例が独立したリスク因子として抽出された(P=0.0095,OR=8.63,95% CI 1.69-44.03).縫合不全21例中,17例(81.0%)では保存軽快,4例(19.0%)では再手術が必要であった.腫瘍に伴う狭窄(術前大腸スコープが通過不可)を認めた症例(P<0.001),深達度T4症例(P=0.0022)で再手術となるリスクが高かった.再手術が必要となった4例のいずれにおいても,縫合不全診断時のCT所見でドレーンの位置は適切であった.
 【考察】Covering ileostomyは狭窄を伴う症例や深達度T4症例では残便の影響で有用性を発揮できず,ドレーンが適切な位置に留置されていたとしても再手術となるリスクが高い.そのような症例では,禁食期間をもうけるための早めの入院や,一時的横行結腸ストマを考慮する必要がある.