講演情報

[P10-2-3]腹膜透析導入を契機に発症したと考えられる直腸脱の一例

太田 尚宏, 西島 弘二, 二上 文夫 (金沢赤十字病院)
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腹膜透析導入を契機に発症したと考えられる,直腸脱の一例を経験したので報告する.
【症例】73歳女性【既往歴】腎硬化症と思われる慢性腎不全にて内科通院中
【現病歴】腹膜透析カテーテル挿入目的に当科紹介.腹腔鏡下にて腹膜透析カテーテルを留置.術後の入院中より肛門部の重みを感じていた.術後2週間で婦人科受診.子宮脱,直腸瘤の診断にてペッサリーを挿入.退院後2回目の腹膜透析中に下腹部痛出現.近医受診したところ,直腸脱指摘され当科紹介.
【現症】10時方向から時計回りに3/4周性に直腸脱.用手整復し,直腸診では軽度括約筋不全を認めた.
【経過】不完全直腸脱に腹膜透析導入を契機に発症したと考対し,Delome手術施行(粘膜切除18cm).術直後は症状軽快したが,1か月程度で肛門部の違和感を自覚.さらに2週間後には直腸脱の再発を認めた.肛門部の翻展は認められないため,経会陰手術は困難が予想され,また根治性からも挙上固定が妥当と判断した.初回手術から3か月で開腹直腸挙上固定術を施行.またその際の術前のCTにて臍部に腹壁瘢痕ヘルニアを認めたため縫合閉鎖した.術後3ケ月現在,軽度の粘膜脱を認める.腹膜透析の際,液を排出することで,諸症状が軽減することから,継続を含め,検討中である.
【結語】生来,臓器脱を認めなかったが,腹膜透析を導入することで腹腔内圧が上昇し,様々な臓器脱を引き起こしたと推察される.今後,腹膜透析を導入する際には,様々な臓器脱に留意することが肝要と思われた.