講演情報
[O14-3]自動縫合器を用いた経肛門的脱出腸管切除術の適応と限界
西森 英史1, 澤田 健1, 三浦 秀元1, 大野 敬祐1, 柏木 清輝1, 鬼原 史1, 岡田 邦明1, 矢嶋 知己1, 北川 真吾2, 秦 史壯1 (1.札幌道都病院外科, 2.札幌優翔館病院外科)
緒言:一般に直腸脱患者は高齢で虚弱であり,その治療法は簡便で低侵襲なものが望ましい.このため経腹的手術より,より低侵襲な経会陰的手術が望まれる傾向にある.当施設では脱出長が概ね5cm以下の症例では,高齢者にはPPHを,それ以外では腹腔鏡下手術を施行している.脱出長が5cm以上であれば,年齢を問わず原則,経肛門的脱出腸管切除術を施行している.
対象:これまでに経験した概ね5 cm以上脱出した完全直腸脱286症例(全377回).本法初回手術時の平均年齢は79.9歳(22~101歳).
本法手技:全身麻酔下,砕石位で施行.脱出腸管を縦軸方向(3時,9時の2カ所)に歯状線より約1.5 cm口側まで自動縫合器(Linear cutter 75mm)で切離する.切離断端は0-PDSで補強縫合する.前壁と後壁で観音開き様となった脱出腸管を自動縫合器(Linear cutter 75mm,TLH30/60/90あるいはTA60/90)で横軸方向にそれぞれ切除し,脱出腸管はすべて切除される.Staple lineは止血と補強を兼ねて結紮を追加する.
結果:286症例中,239例(83.6%,複数回手術43例を含む)が治癒した.平均手術時間は20.9分であった.術後合併症は23例(6.1%)で,吻合部狭窄12例,術後出血6例,腹腔内膿瘍2例,縫合不全2例,後腹膜気腫1例を認めた.周術期死亡は2例(0.5%,誤嚥性肺炎と敗血症)に認めたが,本法が直接原因となった死亡例は認めなかった.再発は全377回施行中,137例(36.3%,同一症例に複数回の再発あり)に認めた.本法1回目後再発:90例,2回目後:30例,3回目後:13例,4回目後:3例,5回目後:2例であった.再発後,再手術までの平均は416.2日であった.
考察と結語:本法を施行し10年以上が経過し,観察期間に比して再発率が高くなるが,骨盤底筋群の形成を付加しない本法は姑息的手術と位置づけられる.高齢・脆弱な患者群にどこまで根治性を追求すべきか,実臨床においては判断に迷う症例も少なくない.本法はその簡便さ,低侵襲および安全面を鑑みると,直腸脱患者に対する手術の選択肢の一つになり得ると考える.
対象:これまでに経験した概ね5 cm以上脱出した完全直腸脱286症例(全377回).本法初回手術時の平均年齢は79.9歳(22~101歳).
本法手技:全身麻酔下,砕石位で施行.脱出腸管を縦軸方向(3時,9時の2カ所)に歯状線より約1.5 cm口側まで自動縫合器(Linear cutter 75mm)で切離する.切離断端は0-PDSで補強縫合する.前壁と後壁で観音開き様となった脱出腸管を自動縫合器(Linear cutter 75mm,TLH30/60/90あるいはTA60/90)で横軸方向にそれぞれ切除し,脱出腸管はすべて切除される.Staple lineは止血と補強を兼ねて結紮を追加する.
結果:286症例中,239例(83.6%,複数回手術43例を含む)が治癒した.平均手術時間は20.9分であった.術後合併症は23例(6.1%)で,吻合部狭窄12例,術後出血6例,腹腔内膿瘍2例,縫合不全2例,後腹膜気腫1例を認めた.周術期死亡は2例(0.5%,誤嚥性肺炎と敗血症)に認めたが,本法が直接原因となった死亡例は認めなかった.再発は全377回施行中,137例(36.3%,同一症例に複数回の再発あり)に認めた.本法1回目後再発:90例,2回目後:30例,3回目後:13例,4回目後:3例,5回目後:2例であった.再発後,再手術までの平均は416.2日であった.
考察と結語:本法を施行し10年以上が経過し,観察期間に比して再発率が高くなるが,骨盤底筋群の形成を付加しない本法は姑息的手術と位置づけられる.高齢・脆弱な患者群にどこまで根治性を追求すべきか,実臨床においては判断に迷う症例も少なくない.本法はその簡便さ,低侵襲および安全面を鑑みると,直腸脱患者に対する手術の選択肢の一つになり得ると考える.