講演情報

[R2-6]ダグラス窩癒着に着目したS状結腸憩室炎による結腸膀胱瘻に対する手術成績の検討

平松 康輔, 的場 周一郎, 前田 裕介, 福井 雄大, 花岡 裕, 戸田 重夫, 上野 雅資, 黒柳 洋弥 (虎の門病院消化器外科)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【はじめに】大腸憩室炎のうち他臓器と瘻孔を形成するものが約2%とされ,特にS状結腸膀胱瘻が多い.S状結腸膀胱瘻に対する治療は手術が第一選択であり,腹腔鏡手術の拡大視と多視点効果が有効であると考えて当院では腹腔鏡下S状結腸切除および一期的な吻合を基本としている.しかし瘻孔周囲や骨盤内で高度の癒着を認めることが多く,手術難易度が高いことがある.今回我々は特にダグラス窩の癒着範囲が手術成績に及ぼす影響について後方視的に検討を行った.【対象と方法】当科で2005年1月から2024年4月までS状結腸憩室炎による結腸膀胱瘻に対して腹腔鏡手術を施行した86例のうち手術映像が入手できた69例を対象とし,ダグラス窩の癒着の範囲が小さい順にA群(Open type:32例),B群(Half-closed type:22例),C群(Full-closed type:15例)と分類し,患者背景,臨床所見,手術成績について後方視的に検討した.【結果】男性65例,女性4例.年齢の中央値58(32-84)歳,BMI22.5(16.3-36.4),ASA1:29例,2:34例,3:6例.腹部手術歴ありが13例,うち3例はS状結腸膀胱瘻根治手術後の再発例であった.患者背景に3群間で有意差は認めなかった.また術式は結腸切除術が55例,直腸切除が13例,ハルトマン手術が1例.脾彎曲授動は48例に施行.7例には一時的回腸人工肛門造設施行.術前尿管ステントを49例に挿入し,うち19例は両側.実施術式としてはC群で直腸切除,回腸人工肛門造設,両側尿管ステント留置が多かった(いずれもp<0.01).手術時間の中央値は245(154-697)分,出血量50(0-3950)ml,術後在院日数9(7-61)日.CD2以上の術後合併症は15例(21%).CD3以上の合併症は6例(8%)で吻合部出血4例,腹腔内膿瘍1例,尿管瘻1例.周術期死亡は認めなかった.手術時間,在院日数はA群と比べてB,C群が有意に長く(いずれもp<0.01),出血量は癒着が広範囲になるにつれて増加した(p<0.001).合併症の発生率に各群間で有意差は認めなかった.また観察内でS状結腸膀胱瘻の再発は認めなかった.【結語】S状結腸膀胱瘻に対する腹腔鏡手術においてダグラス窩の癒着の状態は手術難易度に関連する可能性があると考えられた.