講演情報

[P21-2-1]バリウムによるメッケル憩室炎が原因で生じた腹腔内膿瘍の1例

渡邉 健太郎, 渡邊 正志, 田村 晃, 長嶋 康雄, 吉野 翔 (東京蒲田医療センター)
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メッケル憩室は卵黄腸管の遺残であり,無症状で経過することが多いが,時に症状を呈する.今回,我々はバリウムによるメッケル憩室炎が原因で腹腔内膿瘍となった症例を経験したので,文献的考察を加え報告する.
症例は36歳男性.既往歴は特になかった.検診で上部消化管造影検査を行った2日後より水溶性下痢を伴った腹痛が出現し,消化器内科を受診した.体温36.4℃.腹部は膨満かつ軟,右下腹部に限局性の圧痛を認めたが,反跳痛や筋性防御は無かった.血液検査では,CRP 24.55mg/dl,WBC 12.8×103/μlと炎症反応の上昇を認めた.腹部単純CT検査所見で下腹部正中から右側にかけて約40×25mmの内部にエアーを伴う限局性の液体貯留を認め,腹腔内膿瘍と診断した.また,回腸から盲部には高吸収域がありバリウムの存在が示唆された.
当初は,虫垂炎による膿瘍形成を考え,腹部所見も軽度であったことから抗生物質による保存的治療を行った.しかし,炎症反応が改善しないため,外科紹介され手術を施行した.
手術は腹腔鏡で開始したが,腹壁と小腸の著明な癒着のため開腹移行した.下腹部正中切開で開腹し腹壁と腸管の癒着を剥離すると,膿瘍腔が破壊され膿が流出した.虫垂は正常であった.
癒着した腸管は回盲部より20cm,40cm,60cmの回腸であり,60cmの部位には約6cmのMeckel憩室があり,強い炎症所見を認めた.
これらの所見から,バリウムがメッケル憩室内に貯留したことによる憩室炎が起こり,膿瘍形成したと考えられた.
回盲部より10cmから70cmの回腸を切除し,手縫いでの腸管吻合を行った.同時に虫垂の切除も併せて施行した.病理組織検査では,メッケル憩室として矛盾しない結果であったが,切除した腸管内に穿孔所見は確認できなかった.経過は良好で,術後12日目に退院となった.