講演情報
[P11-2-6]広範囲の両側臀部慢性膿皮症に対しアダリムマブ皮下注により病変縮小後に根治術を行った1例
鹿野 颯太, 岡田 大介, 佐原 力三郎 (牧田総合病院肛門科)
【はじめに】臀部慢性膿皮症は汗腺炎,粉瘤などによる臀部の機械的慢性刺激,免疫異常や皮膚のアポクリン腺の感染や炎症により生じると考えられている疾患である.15~44%に痔瘻が合併しているという報告もある.抗生剤投与や切開,排膿で治療抵抗性を示すことが多く,外科的治療を要する場合がある.外科的治療では病変部の切除を基本とし,広範囲に及ぶ場合は創部皮膚再建や植皮を行うこともある.新たな治療法の選択肢として,2019年2月に化膿性汗腺炎がアダリムマブの適応症として追加承認された.
【症例】52歳,男性,既往歴なし.15年前からの肛門周囲の排膿を主訴に近医を受診,精査加療目的に当院へ紹介となった.両側臀部に広範囲な膿皮症を認め,切除範囲縮小を目的にアダリムマブ投与後に手術を施行する方針となった.皮下への自己注射指導を行い,初回160mgを投与,2週間後に80mgを投与,さらに2週間後以降は1週間毎に40mg週投与を継続した.1カ月毎の外来通院を継続し,部分的な増悪は認めたものの全体に縮小が得られたため,2年2カ月の通院の後に手術目的に入院となった.手術は全身麻酔下に砕石位で行い,膿瘍腔を完全に切除し開放創とした.痔瘻の合併は認めなかった.術後はカデックス軟膏による処置を行い,第5術後病日に退院となった.現在は外来通院継続中である.
【考察】広範囲かつ両側に及ぶ臀部慢性膿皮症で外科的治療を行った場合,創傷治癒までには必然的に長い期間を要するとともに術後のQOL低下を伴うことになる.植皮や皮膚移植により治癒期間は早められるが,長時間の手術となり肛門近傍で術後管理に難渋する.今回,アダリムマブの術前投与により膿皮症の病変を縮小することができ,術後の早期退院が化膿となり良好なQOLを得られたと考える.根治的な治療は外科的治療が必要ではあるが,術前のアダリムマブ投与は治療の選択肢として有用性があると考えられる.
【結語】今回,広範囲の臀部慢性膿皮症に対し術前にアダリムマブを投与し病変を縮小した後に一期的根治術を施行した症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
【症例】52歳,男性,既往歴なし.15年前からの肛門周囲の排膿を主訴に近医を受診,精査加療目的に当院へ紹介となった.両側臀部に広範囲な膿皮症を認め,切除範囲縮小を目的にアダリムマブ投与後に手術を施行する方針となった.皮下への自己注射指導を行い,初回160mgを投与,2週間後に80mgを投与,さらに2週間後以降は1週間毎に40mg週投与を継続した.1カ月毎の外来通院を継続し,部分的な増悪は認めたものの全体に縮小が得られたため,2年2カ月の通院の後に手術目的に入院となった.手術は全身麻酔下に砕石位で行い,膿瘍腔を完全に切除し開放創とした.痔瘻の合併は認めなかった.術後はカデックス軟膏による処置を行い,第5術後病日に退院となった.現在は外来通院継続中である.
【考察】広範囲かつ両側に及ぶ臀部慢性膿皮症で外科的治療を行った場合,創傷治癒までには必然的に長い期間を要するとともに術後のQOL低下を伴うことになる.植皮や皮膚移植により治癒期間は早められるが,長時間の手術となり肛門近傍で術後管理に難渋する.今回,アダリムマブの術前投与により膿皮症の病変を縮小することができ,術後の早期退院が化膿となり良好なQOLを得られたと考える.根治的な治療は外科的治療が必要ではあるが,術前のアダリムマブ投与は治療の選択肢として有用性があると考えられる.
【結語】今回,広範囲の臀部慢性膿皮症に対し術前にアダリムマブを投与し病変を縮小した後に一期的根治術を施行した症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.