講演情報
[P10-2-1]直腸脱に対するGant-三輪・Thiersch法(GMT法)の治療成績
石川 博文1, 樫塚 久記1, 山戸 一郎1, 村上 紘一1, 助川 正泰1, 上野 正闘1, 右田 和寛2, 福岡 晃平2, 中川 正2 (1.奈良県西和医療センター, 2.奈良県総合医療センター)
【目的】当院では高齢女性に多い直腸脱に対する主な手術として経会陰側アプローチのGant-三輪・Thiersch法を行ってきた.今回治療成績について検討を行った.
【対象】2002年7月から2024年2月までに演者が奈良県総合医療センターと奈良県西和医療センターでGMT法を行った32例40件手術を対象とした.
【手術手技】40件中腰椎麻酔 38件(全身麻酔2件),手術時間中央値は45分(35-80分)であっ た.脱出長は4-10cm,平均5.5cmであった.Gant-三輪法は脱出頂部から歯状線付近まで,粘膜下層に吸収糸での貫通結紮を繰り返した.Thiersch法のリングには,2011年までの前期ではナイロン糸1-3本を束ねて,2012年からの後期では人工靱帯Leeds-Keio メッシュ(LK,ユフ精器)を用いた.Thiersch法では1時と7時方向に皮切を行い,ケリー鉗子を用いて外肛門括約筋の外周りに 大きく深くリングを留置した(肛門内に指を入れた後は再度清潔に).
【手術成績】32例の年齢の中央値は79歳(56-94歳),性別は男性5例女性27例であった.前期12例14件,後期20例26件にGMT法を行った.
前期では5例/12例(41.7%)に術後再発を認めた.早期再発の2例(3ヶ月,1年)ではナイロン糸切れが原因であり,再度ナイロン糸でのGMT法を行った.別の2例(4年,6年後再発)はLKでのGMT法を行った.残る1例は,8年後に糸切れで再発し,LKでのGMT法で2度の感染を伴い,最終的に腹腔鏡下吊り上げ術で修復した(初回の術後が良好だったため,GMT法を強く望まれた).後期ではLKを用いた最初の男性例が早期にメッシュ感染を起こしたが,洗浄を繰り返し3年後の抜去で脱出も感染も治癒した.前期からの再発5例に,再発はないがナイロン糸をLKに交換希望された1例を加えて6例,残り20例は初回からLKを用いており,その再発率は0%(0/20例)であった.2020年以降の4例では,子宮脱を経膣的に摘出し会陰形成後にGMT法を行った.また術後合併症である一過性の排便障害には,外来での摘便で対応している.
【結語】LKを用いたGMT法は安定した成績を示したが,感染には十分留意する必要があり,さまざまな選択肢を念頭に置くことも重要である.
【対象】2002年7月から2024年2月までに演者が奈良県総合医療センターと奈良県西和医療センターでGMT法を行った32例40件手術を対象とした.
【手術手技】40件中腰椎麻酔 38件(全身麻酔2件),手術時間中央値は45分(35-80分)であっ た.脱出長は4-10cm,平均5.5cmであった.Gant-三輪法は脱出頂部から歯状線付近まで,粘膜下層に吸収糸での貫通結紮を繰り返した.Thiersch法のリングには,2011年までの前期ではナイロン糸1-3本を束ねて,2012年からの後期では人工靱帯Leeds-Keio メッシュ(LK,ユフ精器)を用いた.Thiersch法では1時と7時方向に皮切を行い,ケリー鉗子を用いて外肛門括約筋の外周りに 大きく深くリングを留置した(肛門内に指を入れた後は再度清潔に).
【手術成績】32例の年齢の中央値は79歳(56-94歳),性別は男性5例女性27例であった.前期12例14件,後期20例26件にGMT法を行った.
前期では5例/12例(41.7%)に術後再発を認めた.早期再発の2例(3ヶ月,1年)ではナイロン糸切れが原因であり,再度ナイロン糸でのGMT法を行った.別の2例(4年,6年後再発)はLKでのGMT法を行った.残る1例は,8年後に糸切れで再発し,LKでのGMT法で2度の感染を伴い,最終的に腹腔鏡下吊り上げ術で修復した(初回の術後が良好だったため,GMT法を強く望まれた).後期ではLKを用いた最初の男性例が早期にメッシュ感染を起こしたが,洗浄を繰り返し3年後の抜去で脱出も感染も治癒した.前期からの再発5例に,再発はないがナイロン糸をLKに交換希望された1例を加えて6例,残り20例は初回からLKを用いており,その再発率は0%(0/20例)であった.2020年以降の4例では,子宮脱を経膣的に摘出し会陰形成後にGMT法を行った.また術後合併症である一過性の排便障害には,外来での摘便で対応している.
【結語】LKを用いたGMT法は安定した成績を示したが,感染には十分留意する必要があり,さまざまな選択肢を念頭に置くことも重要である.