講演情報

[R7-5]高齢化社会における直腸癌手術の現況と課題

吉田 大輔, 中島 秀仁, 中野 光司, 大津 亘留, 石田 俊介, 矢田 一宏, 松本 敏文, 川中 博文 (国立病院機構別府医療センター消化器外科)
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【背景】
本邦では75歳以上の後期高齢者の割合が15.5%に達し,大分県においても18.1%と高齢化社会が急激に進展している.高齢者直腸癌手術症例も増加の一途をたどっており,耐術能低下や周術期リスク上昇などが問題となる.
【方法】
2016年4月から2023年12月に直腸癌(RS-Rb)手術を実施した139例のうち,Stage4症例・一時的人工肛門造設例を除く,吻合を要した88例を対象とした.今回,当院における高齢者に対する直腸癌手術の短期成績および長期成績を評価した.
【結果】
75歳以上(EL群)は29例であり,75歳未満(NE群)は59例であった.背景因子では,心疾患合併がEL群で有意に多かったが,ASAや術前病期などは有意差は認められなかった.短期成績として,術後合併症はEL群6例(21%)・NE群16例(27%),縫合不全はEL群2例(7%)・NE群6例(10%)であり,いずれも有意な差は認められなかった.5年全生存率はEL群:89.1%とNE群:95.0%(p=0.264),5年無再発生存率はEL群:79.2%とNE群:92.7%(p=0.105)であった.いずれもStageIII症例が30%程度認められたが,EL群では術後補助療法が十分に実施できていなかった.
【結語】
高齢者に対する腹腔鏡下直腸癌手術の適応は未だcontroversialではあるが,年齢に応じた注意を払うことにより安全な手術が可能と考える.しかしながら,進行癌症例に関しての術後補助療法の是非についてはさらなる検討が必要と思われる.