講演情報

[R5-5]ロボットもない,ICG蛍光ナビゲーションシステムもない当院での直腸Ra,Rb病変切除時の縫合不全予防の工夫と成績

濱田 哲宏, 大橋 浩一郎, 宇多 優吾, 大原 重保, 杉本 元, 福永 渉, 西野 雅行, 山崎 純也, 柳井 亜矢子, 岡田 敏弘 (宝塚市立病院外科)
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はじめに)直腸切除術における縫合不全予防として,ロボット支援手術や腹腔鏡下ICG蛍光法の有用性が報告されている.いずれの設備もない当院での縫合不全予防の工夫と成績を報告する.対象と方法)2019年1月から2024年4月までに行った直腸切除症例85例中永久ストマ症例とRS病変を除外した34例(男性20例,女性14例)を対象とし,縫合不全予防対策以前の2017年1月から2018年12月までの30例(男性19例,女性11例)を後方視的に比較検討した.予防対策として以下のことを行った.1)口側腸管断端近傍の辺縁動脈の血流の直視での確認,2)自動吻合器のセンターロッドの確実な刺入,3)Double stapling technique(DST)におけるステープルライン交差点の縫合での補強,4)術中下部消化管内視鏡検査(CS)による吻合部ステープル形成の確認,5)消化管内視鏡を用いたリークテスト,6)経肛門的吻合部減圧ドレーンの留置,7)縫合不全リスクを評価したDiverting stoma(DS)の造設基準の設定.なお,患者に規定される縫合不全リスク因子は高齢,男性,肥満,喫煙,糖尿病ならびに術前化学放射線治療(NAC)症例とし,手術手技によるリスク因子は直腸1回切離不能,ステープル交差点の補強不能,リークテスト陽性,術中消化管内視鏡検査でのステープル形成不全,吻合部内腔からの出血とした.因子の合計が2個以上の症例をDS造設の適応とした.NAC症例は全例DSの適応とした.結果)予防対策を行う以前,縫合不全は30例中5例(17%)に認められた.縫合不全による再手術を要したのは3例(10%).保存的加療を行えたのは2例(7%)であった.対策を行った34例では縫合不全は認められなかった(0例,0%).対策後の症例のうち,術中CSによって吻合部に憩室が認められた症例が1例,予定外に端側吻合となっていた症例が2例,リークテスト陽性が2例認められ,いずれの症例も全層結節縫合による補強を行ってDSを造設した.まとめ)縫合不全のリスク評価ならびに手術手技の工夫により縫合不全発生率を低下させることができた.特にCSでの吻合部のチェックが重要であると考えられた.