講演情報

[P4-2-1]S状結腸・直腸RS癌(pStage II/III)における術前病期診断が予後に与える影響

村井 勇太, 杉本 起一, 安藤 祐二, 幸地 彩貴, 十朱 美幸, 仲川 裕喜, 高橋 宏光, 井 祐樹, 入江 宇大, 河口 恵, 小針 文, 百瀬 裕隆, 雨宮 浩太, 土谷 祐樹, 塚本 亮一, 本庄 薫平, 河合 雅也, 石山 隼, 冨木 裕一, 坂本 一博 (順天堂大学医学部下部消化管外科)
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【背景と目的】本邦において大腸癌は男女ともに罹患率・死亡率ともに上位であり,大腸癌に対する有効な治療戦略は重要な課題である.また治療・術式選択は内視鏡検査やCTなどを用いた術前病期診断に基づいて決定されるが,その診断精度は必ずしも高くない.今回我々は,術前病期診断と病理組織学的診断による術後病期診断との相違について検討した.
 【対象と方法】2001年から2018年までの過去18年間に当科で根治切除術を施行したS状結腸および直腸RS癌(pStage II・III:JSCCR第9版)350例を対象とした.術前後の病期診断の相違と予後(無再発生存期間:RFS)の関連性について検討した.
 【結果】男性216人(62%),女性134人(38%)と男性が多かった.部位はS状結腸234例(67%),RS 116例(33%)であった.年齢は中央値65歳(35-92歳),リンパ節郭清総数は中央値20個(1-66個),転移陽性リンパ節数が中央値1個(0-19個)であった.術前病期診断のT因子はcT1:28例(8%),cT2:64例(18%),cT3:193例(56%),cT4:64例(18%)であり,N因子はcN0:207例(59%),cN1:120例(35%),cN2:22例(6%),cN3:1例(0%)であった.術前後で相違があったのはT因子135例(39%),N因子183例(52%)だった.
予後に関して,まずpStage IIで術後病期診断pT3N0症例のうち,under-staging症例(以下U群)(cT1/2:29例)と術前病期診断が正しかった症例(以下E群)(cT3:104例)でRFSに差はなかった(5y-RFS:93.3%vs89.3%;p=0.57).また術後病期診断pT4N0症例のうち,U群(cT2/3:7例)とE群(cT4:10例)でもRFSに差はなかった(5y-RFS:60.0%vs50.0%;p=0.57).
続いてpStage III症例のうちT因子別に検討すると,pT1/2 N(+)ではU群(cN(-):33例)とE群(cN(+):13例)でRFSに差はなかった(5y-RFS:78.5%vs84.6%;p=0.81).pT4 N(+)でもU群(cN(-):9例)とE群(cN(+):18例)でRFSに差はなかった(5y-RFS:75.0%vs71.4%;p=0.83).一方,pT3N(+)ではU群(cN(-):51例)はE群(cN(+):58例)よりもRFSが有意に良好であった(5y-RFS:86.9%vs67.2%;p=0.02).
 【結語】pStage IIIのうちpT3の症例では,術前病期診断においてN因子がunder-stagingされた症例では予後が良好であり,予後予測因子として有用である可能性が示された.