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[R13-3]狭窄を伴うStageIV大腸癌に対する原発巣切除の治療成績

堀 直人, 松本 真実, 宮本 耕吉, 水野 憲治, 小寺 正人, 大石 正博 (鳥取市立病院外科)
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【はじめに】狭窄を伴うStageIV大腸癌に対して原発巣切除をすべきかどうかは臨床的な疑問点である.
【対象と方法】当院において2014年1月から2023年12月までの10年間に狭窄を伴うStageIV大腸癌に対して原発巣切除,ストーマ造設,緩和的ステント留置のいずれかの治療を受けた症例68例を対象とした.切除先行群(A群)と非切除先行群(B群)に群分けし,治療成績を比較検討した.
【結果】A群46例(減圧なし26例,上部減圧後切除3例,ステント留置後切除17例),B群22例(緩和的ステント留置10例,ストーマ造設12例)だった.平均年齢はA群73.0歳/B群70.8歳だった.男女比に差はなかったが,A群で有意にBMIが高く,PNIが高く,CEAは低値だった.腫瘍の局在はB群で左側が多い傾向にあった.StageIVの亜分類に差はなかった.最終的なストーマ保有率は6.5% vs 54.5%だった.初回排便が術後4日/1日,初回食事摂取が4日/2日だった.CD2以上の合併症は16例(34.8%)/3例(13.6%),30日以内死亡は各々1例だった.治療後在院日数は14.5日/24日(p=0.14)だった.初期治療後に化学療法を行った症例は34例(73.9%)/13例(59.1%)(p=0.27)だった.B群のうち5例は化学療法後に原発巣切除を行った.3年生存率はA群41.5% vs B群18.5%(p=0.00)だった.治療後に3か月以上腫瘍フリーの状態を維持できた症例はA群12例/B群1例で,維持できた13例の3年生存率は92.3%だった.
【考察】患者背景には若干差があり,切除するかどうかの意思決定にバイアスがかかっている可能性がある.A群ではB群に比べて消化管機能回復には時間を要するものの,在院期間は短い傾向にあった.CD2以上の合併症は多い傾向にあった.3年生存率はA群で有意に良好だった.積極的な後治療(手術・化学療法・化学放射線療法)を受けた群(各々A1群,B1群と呼称)に絞っても,A1群48.3% vs B1群33.2%(p=0.01)と切除先行群の方が良好だった.
【結語】狭窄を伴うStageIV大腸癌に対する原発巣切除は非切除に比べてストーマが回避でき予後良好であり,切除できるものは切除を考慮すべきである.