講演情報

[P1-2-1]腸管皮膚瘻を伴う感染創に対し陰圧療法を行なった1例

金子 奉暁, 船橋 公彦, 牛込 充則, 鏡 哲, 三浦 康之, 鈴木 孝之, 吉田 公彦, 栗原 聰元 (東邦大学医療センター大森病院消化器外科)
PDFダウンロードPDFダウンロード
腸管皮膚瘻を伴う感染創は,腸液に汚染されることや低栄養がベースにあることから,治療が困難である場合が多い.今回,腸管皮膚瘻を伴う感染創に対し陰圧閉鎖療法を用いた治療を経験したので報告する.症例77歳男性.直腸癌にてハルトマン手術,膀胱部分切除,肝切除術を行なった.術後6日後に小腸穿孔,膀胱縫合不全のために,人工肛門再造設術,膀胱修復術を行なった.術後は集中治療室で管理し全身状態は改善傾向であったが,再手術から10日後に正中創から腸液が流出するようになった.腹部CT検査所見では,空腸が正中創と瘻孔形成していたが,汎発性腹膜炎の所見がないことや再々手術のリスクが高いことを考慮し保存的治療を選択した.まず,汚染が強い部分の正中創を開放し,可及的にデブリードメントを行なった.その後,残る壊死組織の除去と流出する腸液による皮膚障害を防止するため,生理食塩水による持続創洗浄を行なった.同時に,腸液のコントロールのためにソマトスタチンアナログ製剤の投与を行なった.そして,再手術から34日後に壊死組織がほぼ消失したことを確認し,持続洗浄つき陰圧療法(陰圧50mmHg,洗浄50mg/h)開始した.露出した腸管部分には,アダプティックガーゼをおいて保護した.感染創は,腸管皮膚瘻の存在する臍上部の他に,臍下部,旧ストーマ閉鎖部にも認めたため,同時に洗浄陰圧療法を行なった.また,栄養改善目的で腸管皮膚瘻から,栄養補給カテーテルを挿入し経管栄養を開始した.41日間の洗浄陰圧療法により,かなり創部は肉芽が盛り上がり浅くなった.その後は,コストを考慮し,創洗浄に戻し更に24日間治療を行なったところ,ソマトスタチンアナログ製剤の中止と通常のパウチ管理が可能になった.腸管皮膚瘻を伴う創部に陰圧療法は適応外とされるが,陰圧の設定を低くする,非固着性ガーゼで腸管を保護するなどの工夫をすることにより,安全に使用出来て創傷治癒促進の有効な手段になる可能性がある.