講演情報

[P1-1-4]透析患者の結腸癌手術症例における縫合不全の検討

金子 奉暁, 船橋 公彦, 牛込 充則, 哲 鏡, 三浦 康之, 吉田 公彦, 鈴木 孝之, 甲田 貴丸, 栗原 聰元 (東邦大学医療センター大森病院消化器外科)
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背景:透析患者の多くは,糖尿病や血管病変など様々な併存疾患を持っており,術後合併症の発生リスクが高い.特に,縫合不全は発生率が高いだけでなく,重症化のリスクが高い.そこで,当科の現状を検討した.
対象と方法:2004年4月から2023年12月に結腸癌にて腸管吻合を伴う手術を受けた血液透析患者を対象に縫合不全の発生状況,危険因子,予後について,後方視的に検討した.
危険因子の検討項目は,年齢,性別,Body Mass Index(BMI)(≧25,18.5≧),抗凝固薬の内服,低アルブミン血症(<3.0g/dl),病期進行度(>IV期 vs ≦III期),呼吸機能障害,コントロール不良な糖尿病(HgA1c>6.2%),透析期間(≧60ヶ月),喫煙,術前絶食期間(≧1週間),手術方法(開腹 vs 腹腔鏡),他臓器合併切除,手術時間,出血量,輸血,吻合方法(手縫いvs器械),回腸ストーマ造設の有無について検討した.各因子について,フィッシャーの直接確率検定もしくはマンホイットニーのU検定を用いて単変量解析を行い,p<0.05を有意差ありとした
結果:対象患者は21人であり,年齢中央値66(51-83)歳 男/女:14/7であった.
そして,手術時間の中央値245(109-544)分,出血量は,中央値220(0-1180)mlであった.縫合不全率は,14.2%(3/21)であり,66%(2/3)は再手術がされ,そのうち50%(1/2)は在院死していた.再手術が必要なかった1例には,回腸人工肛門が造設されていた.
縫合不全症例では,検討したリスク因子のうちstageIV(p=0.04),従前絶食≧1週間(p=0.04)の症例が有意に高く,手術時間が長く(p=0.008),出血量が多かった(p=0.006).
考察:透析患者の縫合不全率は高く,重篤になりやすかった.リスク因子として,stageIV,絶食期間や手術時間が長い,出血量が多いことが挙げられた.回腸人工肛門造設は,縫合不全防止にならないが,重症化を防止する可能性が示唆された.
結語:透析患者の結腸癌手術は縫合不全率と重症化のリスクが高かった.検討数が少ないため,症例を蓄積し検討する必要があると考えられる.