講演情報

[P17-1-2]Pembrolizumabにより長期生存中のMSI-High StageIV上行結腸癌の1例

山﨑 信人, 塩川 洋之, 大西 賢, 木村 和孝, 神宮 和彦 (独立行政法人地域医療推進機構JCHOさいたま北部医療センター外科)
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【背景】大腸癌治療ガイドライン2022年度版において,Pembrolizumabは,DNAミスマッチ修復(MMR)機能欠損を有する切除不能進行・再発大腸癌に対する一次治療として推奨されている.KEY-NOTE177試験の結果から,Pembrolizumabは治療関連の有害事象が少なく,持続的な抗腫瘍効果が示唆された.今回我々は遠隔リンパ節転移を伴うMSI-High StageIV上行結腸癌に対して原発巣切除の後,Pembrolizumabにより長期生存中の1例を経験したため報告する.
 【症例】症例は76歳女性.1か月前から右下腹部痛を自覚,貧血と右下腹部に腫瘤性病変を指摘され,当科受診.造影CTでは,盲腸から上行結腸肝弯曲部にかけて巨大腫瘍と小腸イレウスを認め,後腹膜浸潤を疑った.多数の領域リンパ節と#16リンパ節に著明な腫大を認めた.大腸内視鏡検査では,横行結腸肝弯曲部に全周性病変を認め,スコープ通過困難であった.術前診断は上行結腸癌 T4b,N3b,M1a(LYM)cStageIVaで,開腹右半結腸切除術を施行した.術中所見では,遠隔転移や腹膜播種を認めなかったが,原発巣は後腹膜浸潤をきたし,著明に腫大した領域リンパ節と一塊となっていた.腫大した領域リンパ節は十二指腸や肝前区域,小腸間膜と強固に癒着し,予定通り原発巣切除を施行した.病理所見は,A,Type3,80×70mm,tub2,pT4b,INFb,Ly1c,v1c,Pn1b,pPM0(550mm),pDM0(55mm),pRM1,N3a(6/6),R2,CurC,pStageIVaであった.遺伝子検査はMSI-H陽性,RAS変異陰性,BRAFv600E変異陽性であった.術後1か月からPembrolizumab療法を開始した.3コース後,遺残した領域リンパ節および#16リンパ節は縮小したためPRの判定で治療継続とした.7コース後,領域リンパ節と#16リンパ節はほぼ消失したが,わずかに残存したためPRと判定.有害事象はGrade1の下痢のみで,現在まで合計14コース投与してPR継続している.
 【考察】Pembrolizumabは,有害事象が少ないため長期投与可能でMSI-High StageIV大腸癌に対して有効であると考えられた.持続的な抗腫瘍効果が期待されることから,今後は治療期間の検討が必要と考えられた.
 【結語】Pembrolizumabにより長期生存中のMSI-High StageIV上行結腸癌の1例を経験した.