講演情報
[SR7-5]当科における下部直腸がん術後排便機能障害への対応
甲田 貴丸1,2, 船橋 公彦1, 栗原 聰元1, 牛込 充則1, 金子 奉暁1, 鈴木 孝之1, 鏡 哲1, 三浦 康之1, 吉田 公彦1 (1.東邦大学医療センター大森病院消化器外科, 2.医療法人社団甲藍会甲田医院)
肛門近傍の直腸癌に対してIntersphincteric resection(ISR)の登場によって肛門括約筋の温存が可能となった.括約筋温存術(Sphincter-preserving Operation:SPO)術後に発生してくる頻便・便失禁・便秘・分割排便・残便感などのQOLに影響を与える排便障害,特に低位前方切除後症候群(Low anterior resection syndrome:LARS)と呼ばれる病態が報告されるようになった.
① 当科にて2002年から2020年12月に,肛門近傍の直腸癌に対して経肛門吻合を行い,人工肛門閉鎖から2年以上経過した81例の排便障害について検討した.
排便障害は,Wexner incontinence score(WIS)≥10をSevere FIと定義した.年齢は中央値で65歳(33~86歳),性別は男/女;54/27であった.
ISR術式の内訳はPartial23例/subtotal7例/total8例CAA27例,IMA処理54例,低位27例,術前CRT有/無;11/70,吻合部口側の憩室数4個以上/以下;4/77,吻合部合併症は19例(狭窄,腸管脱出,縫合不全)であった.Severe FIは25例(30%)に認めた.
severe FIの危険因子を性,年齢,CRT有無,憩室数,術式(Total ISR vs. non-Total-ISR),吻合部合併症の有無にて検討した所,憩室数4個以上/以下が独立した危険因子であった(OR8.8,1.46,95%信頼区間1.5~51.6,P=0.016).
② 我々は2017年より多職種による術後排便障害チームによる診療を行っている.患者自身が予測できない排便のタイミング,頻回な排便をコントロールする事がQOLの向上に繋がると考えている.
まず全例に保存治療として便性の安定のため軟便につながる食事(香辛料やカフェイン,アルコールや油)を避け,不溶性の食物繊維の摂取を指導するといった食事療法,またロペラミドを中心とした薬物療法によって排便タイミングのコントロールを意識した指導を行っている.
最近では当院の医療機器適応外使用の承認を得て2種類のコーンカテーテル(コロプラスト社 コロチップⓇ,アルケア社 コロクリンⓇPC細型ストッパー)を用いた経肛門洗腸療法(TAI)を導入している.TAIにより新直腸に残る残便を空虚化する事で頻便,分割排便,残便感といった症状に対処できている.
① 当科にて2002年から2020年12月に,肛門近傍の直腸癌に対して経肛門吻合を行い,人工肛門閉鎖から2年以上経過した81例の排便障害について検討した.
排便障害は,Wexner incontinence score(WIS)≥10をSevere FIと定義した.年齢は中央値で65歳(33~86歳),性別は男/女;54/27であった.
ISR術式の内訳はPartial23例/subtotal7例/total8例CAA27例,IMA処理54例,低位27例,術前CRT有/無;11/70,吻合部口側の憩室数4個以上/以下;4/77,吻合部合併症は19例(狭窄,腸管脱出,縫合不全)であった.Severe FIは25例(30%)に認めた.
severe FIの危険因子を性,年齢,CRT有無,憩室数,術式(Total ISR vs. non-Total-ISR),吻合部合併症の有無にて検討した所,憩室数4個以上/以下が独立した危険因子であった(OR8.8,1.46,95%信頼区間1.5~51.6,P=0.016).
② 我々は2017年より多職種による術後排便障害チームによる診療を行っている.患者自身が予測できない排便のタイミング,頻回な排便をコントロールする事がQOLの向上に繋がると考えている.
まず全例に保存治療として便性の安定のため軟便につながる食事(香辛料やカフェイン,アルコールや油)を避け,不溶性の食物繊維の摂取を指導するといった食事療法,またロペラミドを中心とした薬物療法によって排便タイミングのコントロールを意識した指導を行っている.
最近では当院の医療機器適応外使用の承認を得て2種類のコーンカテーテル(コロプラスト社 コロチップⓇ,アルケア社 コロクリンⓇPC細型ストッパー)を用いた経肛門洗腸療法(TAI)を導入している.TAIにより新直腸に残る残便を空虚化する事で頻便,分割排便,残便感といった症状に対処できている.