講演情報
[P9-1-7]直腸GISTを経膣的に切除した1例
畑井 三四郎, 永井 俊太郎, 新川 智彦, 大山 康博, 西原 一善, 中野 徹 (北九州市立医療センター外科)
背景:Gastrointestinal Stromal Tumor(GIST)は周囲組織への浸潤性に乏しく,リンパ行性転移の可能性も低いことが知られている.そのため,GISTの根治的治療としては臓器機能を温存した局所切除が選択されることが多い.しかし直腸GISTに関しては,直腸の解剖学的特徴から局所的な切除は困難なことが多く,低位前方切除術や腹会陰式直腸切断術など高侵襲な治療法が選択されることもある.今回,若年女性の直腸GISTを経膣的に切除し得た症例を経験したため報告する.
症例:21歳女性.膣壁に腫瘤があり,受診.下部消化管内視鏡検査で肛門縁から4cmの直腸前壁に15mm大の粘膜下腫瘍を認めた.超音波内視鏡下で細胞診を施行し,GISTと診断した.MRIでは直腸前壁の腫瘍が膣壁を圧排していたが,明らかな浸潤所見は認めなかった.リンパ節転移や遠隔転移は認めなかった.経膣的にアプローチ可能と判断し,経膣的腫瘍切除術を施行した.膣後壁を切開し,膣と直腸を剥離した.経肛門的に腫瘍を触知しつつ,腫瘍の外縁に沿って直腸外膜と筋層を切開した.腫瘍被膜に沿って全周性に腫瘍の受動を行い,被膜をruptureさせることなく一括切除した.直腸粘膜は温存した.直腸外膜,筋層および膣壁を層々に縫合閉鎖し手術を終了した.手術時間は50分,出血量は5mLであった.術後経過は良好で,術後12日目に退院した.術後6ヵ月経過した時点で再発所見は認めていない.
考察:PubMedで「transvaginal」と「GIST」をキーワードに検索したところ,経膣的に直腸GISTを切除した症例は8例報告されていた.いずれの症例も合併症なく経過していた.1例で断端が陽性であったが,10cmの巨大なGISTを切除した症例 であった.上記報告のうち,直腸粘膜が温存された症例は3例であった.
結論:経膣的腫瘍切除術は低侵襲で安全な術式であると考えられる.適応症例は限られるが直腸GISTの治療法における一つの選択肢である.
症例:21歳女性.膣壁に腫瘤があり,受診.下部消化管内視鏡検査で肛門縁から4cmの直腸前壁に15mm大の粘膜下腫瘍を認めた.超音波内視鏡下で細胞診を施行し,GISTと診断した.MRIでは直腸前壁の腫瘍が膣壁を圧排していたが,明らかな浸潤所見は認めなかった.リンパ節転移や遠隔転移は認めなかった.経膣的にアプローチ可能と判断し,経膣的腫瘍切除術を施行した.膣後壁を切開し,膣と直腸を剥離した.経肛門的に腫瘍を触知しつつ,腫瘍の外縁に沿って直腸外膜と筋層を切開した.腫瘍被膜に沿って全周性に腫瘍の受動を行い,被膜をruptureさせることなく一括切除した.直腸粘膜は温存した.直腸外膜,筋層および膣壁を層々に縫合閉鎖し手術を終了した.手術時間は50分,出血量は5mLであった.術後経過は良好で,術後12日目に退院した.術後6ヵ月経過した時点で再発所見は認めていない.
考察:PubMedで「transvaginal」と「GIST」をキーワードに検索したところ,経膣的に直腸GISTを切除した症例は8例報告されていた.いずれの症例も合併症なく経過していた.1例で断端が陽性であったが,10cmの巨大なGISTを切除した症例 であった.上記報告のうち,直腸粘膜が温存された症例は3例であった.
結論:経膣的腫瘍切除術は低侵襲で安全な術式であると考えられる.適応症例は限られるが直腸GISTの治療法における一つの選択肢である.