講演情報
[P19-2-1]炎症性腸疾患疑いで紹介された腸管スピロヘータの一例
高橋 秀行1,2, 横山 薫1, 原田 洋平1,2, 伊藤 隆士1,2, 堀井 敏喜1, 金澤 潤1, 池原 久朝1, 草野 央1, 山内 浩史3 (1.北里大学病院消化器内科, 2.北里大学病院病理部, 3.山内メディカルクリニック)
【症例】50歳代男性【現病歴】20XX-3年から20XX年まで便潜血陽性を毎年指摘されていたが,無症状のため下部消化管内視鏡検査(CS)を受けていなかった.20XX年6月排便回数増加傾向となり精査のために前医を受診した.CSにて盲腸~横行結腸にかけて非連続性に潰瘍が多発し,炎症性ポリープや瘢痕が認められ,大腸Crohn病(CD)や腸結核を疑われた.病理所見では高度の炎症性変化のみで確定診断に至らず,精査のために同年9月当院を紹介受診した.受診時排便回数7-8回/日の軟便であった.CDと腸結核の精査のため経口小腸造影と上部消化管内視鏡検査を施行したが慢性胃炎のみで便の抗酸菌培養も陰性であった.12月に当院でCSを施行したところ,前医の所見と同様に盲腸~下行結腸まで不整形潰瘍が多発し,周囲に炎症性ポリープを伴い,S状結腸~直腸には粗造な粘膜変化を認めた.終末回腸~直腸までの各部位から生検を施行したところ,大腸の全ての部位にスピロヘータを認めた.腸管スピロヘータ症の診断となり,メトロニダゾールの内服を開始した.その後,便の性状は改善した.20XX+1年2月経過観察のCSを施行したところ,盲腸~下行結腸まで炎症性ポリープが多発して凹凸は著明であったが,不整形潰瘍は消失し,治癒過程と考えられる2-3mm程度の小潰瘍やびらんが残存しているのみであった.全大腸より生検を施行したが,スピロヘータは検出されなかった.なお,本例は同性愛者やペット飼育などもなく,感染源は不明であった.【考察】本邦ではCSが普及しており,炎症性腸疾患(IBD)が疑われて専門施設へ紹介となる症例が増加しているが,その中には感染性腸炎が含まれていることが少なくない.IBDの治療開始前に感染を除外しておくことが肝要である.