講演情報

[P16-1-2]S状結腸憩室穿孔に伴う後腹膜膿瘍が化膿性股関節を合併した1例

竹中 雄也, 西原 弘貴, 牧野 哲哉, 坂口 治, 岡田 憲幸 (西宮渡辺病院外科)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【はじめに】大腸憩室穿孔に伴う後腹膜膿瘍が下肢に進展することは稀である.今回,我々はS状結腸憩室穿孔に伴う後腹膜膿瘍が化膿性股関節を併発した1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
 【症例】77歳,女性.既往歴として数年前に大腸憩室炎に対して他院で入院での保存的加療歴があった.今回,1ヶ月前から発熱と左下肢痛を自覚し自宅で様子をみていたが改善なく,転倒した際に歩行困難となったため当院に救急搬送となった.来院時,血液生化学検査にてWBC23600/μL,CRP16と炎症反応が高値であったが,身体診察では腹部所見に異常はなかった.CTにて骨盤内から腸骨稜を超えて左大腿部まで広がる腸腰筋膿瘍と,左股関節の関節包内に広がるガス像を認めた.またMRI脂肪抑制T2画像にて寛骨臼窩に骨髄炎が疑われた.画像上,膿瘍腔はS状結腸と連続しており既往歴からS状結腸憩室穿孔に伴う後腹膜膿瘍,及び腸腰筋を介して感染が骨盤外に進展したことによる化膿性股関節炎と診断した.緊急手術にて開腹ハルトマン手術,及び整形外科による左股関節洗浄ドレナージ術を実施した.術中所見では腹腔内に感染徴候を認めなかったがS状結腸は左側骨盤壁に強固に癒着していた.S状結腸を開放し結腸内腔から観察すると多発憩室と左骨盤壁に連続する1cm大の穿孔部が確認できた.穿孔部を含む結腸切除を実施し,後腹膜膿瘍を開放するために左骨盤壁を切開し膿瘍腔内にドレーンを留置した.整形外科により左股関節包・腸腰筋の洗浄ドレナージが実施された.術後は骨髄炎の増悪を予防する目的で長期間の抗生剤投与を行い,術後21日目に全てのドレーンを抜去し経過は良好である.
 【考察】本症例はS状結腸憩室穿孔に伴う後腹膜膿瘍に化膿性股関節炎を併発した稀な症例であったが,腹腔内と股関節からそれぞれ適切にアプローチすることで早期に感染コントロールが可能であった.