講演情報
[P23-2-5]ISR術後の吻合腸管壊死に対するPull through法による肛門温存の実際
田代 浄1,2, 石川 慎太郎1,2, 關 裕介2, 吉村 俊太郎2, 河野 義春2, 森 和彦2, 川崎 誠治2 (1.三井記念病院大腸外科, 2.三井記念病院消化器外科)
括約筋間直腸切除(ISR)術後早期の吻合トラブルでは,救命とともに肛門の救済も考慮する場合がある.吻合腸管壊死における肛門温存を期待したPull through法の実際を供覧いただく.
【症例】46歳,男性.維持透析患者でBMI33kg/m2.主訴は下血.直腸診で肛門縁から4cm,肛門直腸輪から0.5cmの3時方向に腫瘤を触知.術前診断はRb,type1,tub1,T2N0M0 cStageI.ロボット支援下ISR(LCA温存prxD3郭清),横行結腸双孔式人工肛門造設術を施行した.術中ICG蛍光法で吻合腸管の血流評価をおこなった.手術時間351分,出血210ml.経過良好で術後10日目(POD10)に退院.T1b(6mm)N0M0 pStageI,PM0,DM0,RM0だった.退院3日後(POD13),吻合腸管の血流不全と限局化膿瘍で再入院となった.翌日(POD14),全身状態と炎症所見が悪化し緊急腹腔鏡下洗浄ドレナージ,壊死腸管切除術を施行した.ICG蛍光法で血流を評価し壊死腸管を切除,腸管断端は約7cm肛門から脱出させて周囲皮膚に固定し,Pull through法で2期再建を予定した.手術時間178分,出血336ml.経時的に脱出腸管は鬱血から壊死を呈し,再手術後5日目(POD18)に2期目を早め,腹腔鏡下IMA切離,脾弯曲授動,壊死腸管切除,肛門吻合を施行.ICG蛍光法で10cm程度の腸管を切除し,肛門吻合をおこなった.手術時間189分,出血28ml.再建手術後14日目(POD28)に退院となった.
【考察】吻合腸管壊死の緊急手術は,壊死腸管切除とドレナージが原則となる.緊急ハルトマン手術後に肛門温存を求めた場合,肛門の瘢痕化と狭窄,狭骨盤による吻合腸管の誘導制限,血流障害による吻合腸管の短縮により再建の困難が予想される.Pull through法は,肛門機能を温存し,吻合腸管の距離を担保し確実な2期再建が期待できる.またIMA切離や脾弯授動を追加しても腸管が届かない場合は,回盲部移動法や小腸間置法も念頭に入れておく必要がある.排便障害は必須となりTotal ISRに準じた管理が予想される.
【症例】46歳,男性.維持透析患者でBMI33kg/m2.主訴は下血.直腸診で肛門縁から4cm,肛門直腸輪から0.5cmの3時方向に腫瘤を触知.術前診断はRb,type1,tub1,T2N0M0 cStageI.ロボット支援下ISR(LCA温存prxD3郭清),横行結腸双孔式人工肛門造設術を施行した.術中ICG蛍光法で吻合腸管の血流評価をおこなった.手術時間351分,出血210ml.経過良好で術後10日目(POD10)に退院.T1b(6mm)N0M0 pStageI,PM0,DM0,RM0だった.退院3日後(POD13),吻合腸管の血流不全と限局化膿瘍で再入院となった.翌日(POD14),全身状態と炎症所見が悪化し緊急腹腔鏡下洗浄ドレナージ,壊死腸管切除術を施行した.ICG蛍光法で血流を評価し壊死腸管を切除,腸管断端は約7cm肛門から脱出させて周囲皮膚に固定し,Pull through法で2期再建を予定した.手術時間178分,出血336ml.経時的に脱出腸管は鬱血から壊死を呈し,再手術後5日目(POD18)に2期目を早め,腹腔鏡下IMA切離,脾弯曲授動,壊死腸管切除,肛門吻合を施行.ICG蛍光法で10cm程度の腸管を切除し,肛門吻合をおこなった.手術時間189分,出血28ml.再建手術後14日目(POD28)に退院となった.
【考察】吻合腸管壊死の緊急手術は,壊死腸管切除とドレナージが原則となる.緊急ハルトマン手術後に肛門温存を求めた場合,肛門の瘢痕化と狭窄,狭骨盤による吻合腸管の誘導制限,血流障害による吻合腸管の短縮により再建の困難が予想される.Pull through法は,肛門機能を温存し,吻合腸管の距離を担保し確実な2期再建が期待できる.またIMA切離や脾弯授動を追加しても腸管が届かない場合は,回盲部移動法や小腸間置法も念頭に入れておく必要がある.排便障害は必須となりTotal ISRに準じた管理が予想される.