講演情報
[SY1-4]潰瘍性大腸炎罹患粘膜に発生した腫瘍性病変に対する内視鏡治療ストラテジー
米田 頼晃, 樫田 博史, 河野 匡志, 永井 知行, 工藤 正俊 (近畿大学医学部消化器内科)
【背景】
潰瘍性大腸炎(UC)で長期罹患例において潰瘍性大腸炎関連腫瘍(UCAN)が問題となる.当院で経験したUC罹患粘膜に発生した腫瘍に対する内視鏡治療例について検討した.
【対象】
2016年4月から2024年4月までの検討期間として内視鏡治療・外科治療を受けた102症例171病変を対象とした.当院で施行した内視鏡治療を実施した症例を後向きに検討した.ESD適応については,病変範囲がクリアで,超音波内視鏡(EUS)で深達度診断を行い粘膜内病変までで,さらに術前の病変周囲の4点生検でdysplasiaがnegativeな症例のみに実施している.
【結果】
内視鏡治療163例,外科治療8例であった.内視鏡治療群では内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は18例に実施され治療成績は一括切除率94.4%,R0切除率85.7%であった.偶発症は穿孔1例あり緊急手術を実施した.ESD以外の残りの症例は内視鏡的粘膜切除術,ポリペクトミーを実施している.ESDを受けた18例の病理学的診断は潰瘍性大腸炎関連腫瘍(UCAN)が8例(high grade dysplasia(HGD)7例,low grade dysplasia(LGD)1例),Sporadic neoplasia(Tubular adenoma)5例,Sessile serrated lesion(SSL)4例,炎症性ポリープ1例であった.そのうち2例に追加手術を行った.1例は深部断端陽性例の術前深達度診断の困難症例と,もう1例はESD切除後に多部位に異時多発のdysplasiaがみられたため追加外科手術を受けた.これらの症例はその後のフォローでいずれも局所再発・遠隔転移は認めていない.
外科治療群は当院初回大腸内視鏡で進行癌の症例と内視鏡観察で範囲診断困難と判断した症例は内視鏡治療適応外のため大腸全摘術を受けている.最終病期の内訳はpStage0 2例,pStageI 2例,pStage II 2例,pStage III 2例であった.
【結語】
UC罹患粘膜に発生した腫瘍に対するESDを含めた内視鏡治療はこれらの成績から許容されるものと考えられた.Sporadic neoplasia,SSL群では全例が経過観察可能であり,いずれも局所再発は認めなかった.UCAN群では,多発性にdysplasiaが出現する場合があるので厳密なサーベイランスが必要である.
潰瘍性大腸炎(UC)で長期罹患例において潰瘍性大腸炎関連腫瘍(UCAN)が問題となる.当院で経験したUC罹患粘膜に発生した腫瘍に対する内視鏡治療例について検討した.
【対象】
2016年4月から2024年4月までの検討期間として内視鏡治療・外科治療を受けた102症例171病変を対象とした.当院で施行した内視鏡治療を実施した症例を後向きに検討した.ESD適応については,病変範囲がクリアで,超音波内視鏡(EUS)で深達度診断を行い粘膜内病変までで,さらに術前の病変周囲の4点生検でdysplasiaがnegativeな症例のみに実施している.
【結果】
内視鏡治療163例,外科治療8例であった.内視鏡治療群では内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は18例に実施され治療成績は一括切除率94.4%,R0切除率85.7%であった.偶発症は穿孔1例あり緊急手術を実施した.ESD以外の残りの症例は内視鏡的粘膜切除術,ポリペクトミーを実施している.ESDを受けた18例の病理学的診断は潰瘍性大腸炎関連腫瘍(UCAN)が8例(high grade dysplasia(HGD)7例,low grade dysplasia(LGD)1例),Sporadic neoplasia(Tubular adenoma)5例,Sessile serrated lesion(SSL)4例,炎症性ポリープ1例であった.そのうち2例に追加手術を行った.1例は深部断端陽性例の術前深達度診断の困難症例と,もう1例はESD切除後に多部位に異時多発のdysplasiaがみられたため追加外科手術を受けた.これらの症例はその後のフォローでいずれも局所再発・遠隔転移は認めていない.
外科治療群は当院初回大腸内視鏡で進行癌の症例と内視鏡観察で範囲診断困難と判断した症例は内視鏡治療適応外のため大腸全摘術を受けている.最終病期の内訳はpStage0 2例,pStageI 2例,pStage II 2例,pStage III 2例であった.
【結語】
UC罹患粘膜に発生した腫瘍に対するESDを含めた内視鏡治療はこれらの成績から許容されるものと考えられた.Sporadic neoplasia,SSL群では全例が経過観察可能であり,いずれも局所再発は認めなかった.UCAN群では,多発性にdysplasiaが出現する場合があるので厳密なサーベイランスが必要である.