講演情報

[P23-2-7]ミオームボーラーを用いて経肛門的に摘出した巨大直腸異物の1例

大野田 貴, 稲尾 綾乃, 山﨑 翔斗, 原 亮介, 森山 正章, 福岡 秀敏 (諫早総合病院外科)
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【緒言】直腸異物は非穿孔例の場合経肛門的摘出術が試みられるが,大きな異物が迷入した場合もあり,工夫を施すことで摘出し得た症例も報告される.【症例】64歳,男性.性的玩具を肛門より挿入したところ,直腸内に迷入し自身で摘出できなくなり当院を受診された.腹部圧痛や腹膜刺激症状は認めなかった.肛門縁近傍に径10cm程度のシリコン製の異物を認めた.活動性出血はなかったが,暗赤色粘液の少量排出を認めた.CT検査にて縦18cm,横9.5cm程度の異物を認めた.異物が迷入した直腸は高度に進展していたが,腸管外や遊離腹腔内にガス像は認めなかった.まず救急外来で無麻酔下に経肛門的摘出術を開始したが,異物の横径が大きく腸管と異物の隙間がほとんどなく,また粘液のため滑りやすいこと,シリコン素材のため鉗子で把持しても容易に裂けることから摘出は困難であった.手術室に移動し腰椎麻酔下に同様の処置を行ったが異物を十分に牽引することが出来ず摘出は困難であった.次に子宮筋腫の摘出に用いられるミオームボーラーを異物に穿刺して牽引できるようにし,慎重に摘出を試みたところ,肛門などの損傷なく摘出出来た.肉眼的に直腸粘膜の損傷を認めたが活動性出血はなく処置を終了した.初診時血液検査で白血球数19170/μLと炎症反応上昇を認めたため,摘出後は入院の上絶食抗菌薬管理とした.炎症反応の改善をみて食事を開始し合併症なく経過した.【考察】直腸異物は穿孔していても腹部症状が乏しい症例が報告されており,異物の形態評価も含めCTなどの画像精査が必要と考えられる.摘出の際に腹部を圧迫することで摘出が容易になるとする報告はあるが,腹部圧迫が腸管損傷のリスクになるとの報告もあり,基本的には直腸異物を十分に牽引できる状態にすることが重要である.自験例のように比較的柔らかい素材の場合は異物に穿刺することで牽引が可能な器械を用いる方法が有用であると考えられた.