講演情報
[P15-1-4]悪性リンパ腫との鑑別が困難であった非特異性大腸潰瘍の1例
今井 よい1, 榎本 俊行1, 長尾 さやか1, 柿崎 奈々子1, 小幡 七菜1, 斉田 芳久1, 高橋 啓2 (1.東邦大学医療センター大橋病院外科, 2.東邦大学医療センター大橋病院病理診断科)
大腸潰瘍性病変の鑑別には大腸内視鏡検査(以下CS)が有用である.CS及び生検検査を施行も,悪性リンパ腫との鑑別が困難であった大腸潰瘍の1例を経験したので報告する.症例は50代男性,主訴は鮮血便.既往歴・家族歴に特記事項なく内服薬も無く,身体所見上貧血,腹痛を認めなかった.直腸診にて血液の付着無く前処置の上でCSを施行した.盲腸に周堤隆起を伴う潰瘍性病変を認め4か所から生検,明らかな出血は認めなかったが潰瘍底に露出血管ありクリッピング施行.生検結果にて悪性リンパ腫が否定できず免疫染色が追加されたが断定困難であり,病理部からは再検の指示を頂いた.内科医より再検査の説明がなされたが,検体量が少ないと再々検の可能性があること,悪性疾患が否定できないことから診断的治療を兼ねた切除を患者が希望され外科依頼となる.盲腸切除を行い術中病理に提出,非上皮性であれば永久標本で詳細な病理診断を施行,上皮性であればリンパ節郭清を伴う回盲部切除を行う旨を十分説明し,腹腔鏡手術を施行.臍部12mmポート,左側腹部に5mmポートを2本挿入,回腸に腸管把持鉗子をかけ術中内視鏡を挿入した.潰瘍性病変は消失し瘢痕となっていた.瘢痕部を含めて盲腸切除し術中病理にて上皮性腫瘍がないことを確認し手術終了,永久標本にて悪性所見はなく,粘膜下層に線維化を伴う潰瘍瘢痕であった.
大腸癌の肉眼的分類の2型(潰瘍限局型)と鑑別が必要な疾患として悪性リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma),GIST,腸結核,単純性潰瘍などがあげられる.悪性リンパ腫であれば治療の主体は化学療法となり,狭窄などの症状が無ければ外科的切除は選択されない.しかしながら本症例では4カ所の生検で確定診断が得られず,本人の希望もありCS再検査でなく診断的治療目的に手術を施行した.術中内視鏡を腹腔鏡と併用することで,最小限の切除で検体を摘出することが可能であった.結果として単純性潰瘍であったが,悪性リンパ腫の可能性がある以上,診断的治療を兼ねた切除で確定診断を施行できたことは有用であったと考える.
大腸癌の肉眼的分類の2型(潰瘍限局型)と鑑別が必要な疾患として悪性リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma),GIST,腸結核,単純性潰瘍などがあげられる.悪性リンパ腫であれば治療の主体は化学療法となり,狭窄などの症状が無ければ外科的切除は選択されない.しかしながら本症例では4カ所の生検で確定診断が得られず,本人の希望もありCS再検査でなく診断的治療目的に手術を施行した.術中内視鏡を腹腔鏡と併用することで,最小限の切除で検体を摘出することが可能であった.結果として単純性潰瘍であったが,悪性リンパ腫の可能性がある以上,診断的治療を兼ねた切除で確定診断を施行できたことは有用であったと考える.