講演情報
[VPD3-3]直腸癌術後縫合不全に対する腹腔鏡手術の工夫
小田 康徳, 井上 重隆, 船方 潤, 花木 怜, 溝口 聖貴, 山本 真大, 佐藤 優, 中島 陽平, 森 瞳美, 服部 正見, 松田 圭央, 亀田 千津, 三好 圭, 小林 毅一郎, 小倉 康裕, 上田 純二, 小島 雅之, 本山 健太郎, 永井 英司, 中房 祐司 (福岡赤十字病院外科)
近年の手術手技の確立や自動縫合器などの器具の発展により,直腸癌手術における治療成績は向上してきたが,縫合不全はいまだ外科医を悩ませる合併症の一つである.汎発性腹膜炎をきたすと重篤な状態になる可能性が高く,その予防と早期発見,治療が重要な課題となっている.保存的加療(絶食,高カロリー輸液,ドレナージ)で対応するか緊急手術で人工肛門造設と洗浄ドレナージが必要かは汎発性腹膜炎を発症しているかが重要となる.
再手術において低侵襲手術は可能と思われるが,術後の炎症による癒着,腸管の浮腫と拡張,そして糞便貯留による術野の展開に難渋することがあるため,開腹手術への移行を躊躇するべきではない.当院で腹腔鏡手術を行う場合は以下の点に注意している.①気腹後に十分に観察を行い,腹腔内の汚染の程度を把握し,腹腔鏡手術での継続が可能か判断する.②大量の生理食塩水で洗浄を行う.小開腹創からの洗浄も有効である.③腸管や腹壁に付着した膿苔はガーゼにて除去する.④穿孔部閉鎖が可能であれば縫合閉鎖を行う.⑤人工肛門から肛門側の腸管に糞便が貯留している場合はドレナージ不良による汎発性腹膜炎の再燃を予防するために,人工肛門からチューブを挿入して洗浄を行い,経肛門ドレーンより回収する.
当院にて2010年1月から2023年12月までに直腸癌の手術を374例(ロボット/腹腔鏡/開腹:62例/268例/44例)に施行した.腸管吻合を行った313例中26例(8.3%,ロボット/腹腔鏡/開腹:6例/17例/3例)に縫合不全が認められた.保存的治療で改善したのが17例で,手術を施行した9例中3例を腹腔鏡手術にて行った.3例中1例の症例は60代女性で直腸癌(Rb,T1bN0M0:Stage I)に対してロボット支援下低位前方切除術を施行した.術後6日目に経肛門ドレーンを抜去し,術後7日目に食事を開始した.術後8日目の朝に骨盤内ドレーン抜去をしたが,午後より急に腹痛を発症し,CTにて縫合不全による汎発性腹膜炎の診断で同日に緊急手術を施行した.緊急手術時のビデオを供覧し,当院での縫合不全に対する手術の工夫について提示する.
再手術において低侵襲手術は可能と思われるが,術後の炎症による癒着,腸管の浮腫と拡張,そして糞便貯留による術野の展開に難渋することがあるため,開腹手術への移行を躊躇するべきではない.当院で腹腔鏡手術を行う場合は以下の点に注意している.①気腹後に十分に観察を行い,腹腔内の汚染の程度を把握し,腹腔鏡手術での継続が可能か判断する.②大量の生理食塩水で洗浄を行う.小開腹創からの洗浄も有効である.③腸管や腹壁に付着した膿苔はガーゼにて除去する.④穿孔部閉鎖が可能であれば縫合閉鎖を行う.⑤人工肛門から肛門側の腸管に糞便が貯留している場合はドレナージ不良による汎発性腹膜炎の再燃を予防するために,人工肛門からチューブを挿入して洗浄を行い,経肛門ドレーンより回収する.
当院にて2010年1月から2023年12月までに直腸癌の手術を374例(ロボット/腹腔鏡/開腹:62例/268例/44例)に施行した.腸管吻合を行った313例中26例(8.3%,ロボット/腹腔鏡/開腹:6例/17例/3例)に縫合不全が認められた.保存的治療で改善したのが17例で,手術を施行した9例中3例を腹腔鏡手術にて行った.3例中1例の症例は60代女性で直腸癌(Rb,T1bN0M0:Stage I)に対してロボット支援下低位前方切除術を施行した.術後6日目に経肛門ドレーンを抜去し,術後7日目に食事を開始した.術後8日目の朝に骨盤内ドレーン抜去をしたが,午後より急に腹痛を発症し,CTにて縫合不全による汎発性腹膜炎の診断で同日に緊急手術を施行した.緊急手術時のビデオを供覧し,当院での縫合不全に対する手術の工夫について提示する.