講演情報
[P10-2-5]括約筋間直腸切除術後直腸脱に対して会陰式直腸S状結腸切除・肛門挙筋形成術(Altemeier法)を施行した1例
岡崎 直人1,2, 田中 彰2, 平岡 優2, 平能 康充1 (1.埼玉医科大学国際医療センター消化器外科, 2.康正会病院外科)
【はじめに】
下部直腸癌に対する括約筋間直腸切除術(ISR)は肛門温存と低い局所再発率を両立する手術として受け入れられているが,total ISRの術後 5 - 10%の頻度で粘膜脱/直腸脱を合併し,排便機能障害をきたすことがある.今回,ISR術後に発症した直腸脱に対しAltemeier法を適用し,経会陰的切除・骨盤底修復術により良好な排便機能の回復が得られた1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.
【症例】
79歳男性.下部直腸癌に対し腹腔鏡下ISR術および回腸人工肛門造設術を施行,術後6か月で人工肛門閉鎖術を施行された.初回術後10か月頃より直腸脱を認めた.術後1年1か月,左側方リンパ節転移再発に対し腹腔鏡下左側方リンパ郭清術が追加された.その後5年再発なく経過したが,直腸脱は徐々に増悪し常時脱出し出血や著しい便失禁(CCFIS 20点,LARS 42点)を伴うようになった.直腸視診では4cm程度腸管の脱出を認め,MRI検査では右側で外肛門括約筋の欠損,左側で一部肛門挙筋の欠損を認めた.手術所見では線維性非薄化した脆弱な脱出結腸導管および骨盤内の余剰結腸を経会陰的に切除し,neorectumの前後両側で左右の肛門挙筋を縫合して形成し肛門管に吻合した.手術時間は2時間,出血少量であった.術後1年経過し再発なく,便失禁なく良好な排便機能を保っている(CCFIS 3点,LARS 16点).
【考察】
ISR術後の直腸脱の原因は解明されていないが,過長な口側腸管との関連や一部の内外肛門括約筋と連合縦走筋が切除されるISR特有の術式との関連が報告されおり,症状を有する場合は根治的手術が推奨されている.術式は,内肛門括約筋に似た機能が再建されるDelorme法や腹腔鏡下直腸固定術の報告が多い.本症例ではAltemeier法を選択し余剰腸管を切除し骨盤底修復術(恥骨直腸筋および肛門挙筋の縫縮)を加えたことで,術後再発予防および便失禁の改善に寄与したと考えられる.
【結語】
ISR術後の直腸脱に対してAltemeier法は安全に施行でき,治療の選択肢の1つとなり得る術式であった.
下部直腸癌に対する括約筋間直腸切除術(ISR)は肛門温存と低い局所再発率を両立する手術として受け入れられているが,total ISRの術後 5 - 10%の頻度で粘膜脱/直腸脱を合併し,排便機能障害をきたすことがある.今回,ISR術後に発症した直腸脱に対しAltemeier法を適用し,経会陰的切除・骨盤底修復術により良好な排便機能の回復が得られた1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.
【症例】
79歳男性.下部直腸癌に対し腹腔鏡下ISR術および回腸人工肛門造設術を施行,術後6か月で人工肛門閉鎖術を施行された.初回術後10か月頃より直腸脱を認めた.術後1年1か月,左側方リンパ節転移再発に対し腹腔鏡下左側方リンパ郭清術が追加された.その後5年再発なく経過したが,直腸脱は徐々に増悪し常時脱出し出血や著しい便失禁(CCFIS 20点,LARS 42点)を伴うようになった.直腸視診では4cm程度腸管の脱出を認め,MRI検査では右側で外肛門括約筋の欠損,左側で一部肛門挙筋の欠損を認めた.手術所見では線維性非薄化した脆弱な脱出結腸導管および骨盤内の余剰結腸を経会陰的に切除し,neorectumの前後両側で左右の肛門挙筋を縫合して形成し肛門管に吻合した.手術時間は2時間,出血少量であった.術後1年経過し再発なく,便失禁なく良好な排便機能を保っている(CCFIS 3点,LARS 16点).
【考察】
ISR術後の直腸脱の原因は解明されていないが,過長な口側腸管との関連や一部の内外肛門括約筋と連合縦走筋が切除されるISR特有の術式との関連が報告されおり,症状を有する場合は根治的手術が推奨されている.術式は,内肛門括約筋に似た機能が再建されるDelorme法や腹腔鏡下直腸固定術の報告が多い.本症例ではAltemeier法を選択し余剰腸管を切除し骨盤底修復術(恥骨直腸筋および肛門挙筋の縫縮)を加えたことで,術後再発予防および便失禁の改善に寄与したと考えられる.
【結語】
ISR術後の直腸脱に対してAltemeier法は安全に施行でき,治療の選択肢の1つとなり得る術式であった.