講演情報

[O6-8]腹腔鏡下大腸癌手術におけるAIを用いたナビゲーション手術の開発

藤田 隼輔1, 白下 英史2, 長谷川 巧1, 青山 佳正1, 板井 勇介1, 蔀 由貴1, 河野 洋平1, 赤木 智則1, 二宮 繁生1, 柴田 智隆3, 上田 貴威4, 衛藤 剛5, 徳安 達士6, 猪股 雅史1 (1.大分大学医学部消化器・小児外科学講座, 2.大分大学高度医療人育成講座, 3.大分大学医学部救命救急医学講座, 4.大分大学医学部総合外科・地域連携学講座, 5.大分大学グローカル感染症研究センター, 6.福岡工業大学情報工学部情報システム工学科)
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【はじめに】大腸癌手術では,適切な剥離層で手術を進めていくことで,安全かつ根治的な手術が可能となる.我々外科医は適切な剥離層の見極めを解剖学的ランドマークに基づいて,判断を行っていると考えた.解剖学的ランドマークは血管などの構造物だけでなく,間膜や組織間の間隙なども含まれ,その認知・判断には経験や能力による個人差があり,これを教示するAIシステムを開発することで,手術治療成績の向上や術中合併症の減少に期待ができる.
 【目的】大腸癌手術に必要な解剖学的ランドマークのAIによる教示システムの開発を行なった.
 【対象・方法】当院の大腸外科チーム(JSES技術認定医4名を含む)と福岡工業大学との共同開発にて行なった.当院にて施行された腹腔鏡下S状結腸切除術の手術動画を用いて,内側アプローチにおける腹膜切開~中枢血管処理前までのシーンを対象とした.
 1.シーンを①視野展開~腹膜切開②直腸固有筋膜の同定・剥離に分けた.
 2.有用となる解剖学的ランドマークを検討するため,アノテーション対象物を定義(FPR:直腸固有筋膜,FAP;直腸固有筋膜前腹膜,RTP:後腹膜,RPF:後腹膜下筋膜,LCT:疎性結合組織)した.
 3.手術動画から静止画を抜き出し,外科医によるアノテーションを行い,学習データを作成した.
 4.AIに学習させ,動画に表示させることで有用な解剖学的ランドマークを評価した.
 【結果】シーン①において有用となる解剖学的ランドマークはFAPとRTPの境界(Dimpling line)であった.シーン②においてはFPRおよびFPRとLCTの境界の教示が有用であった.
 【結語】大腸癌手術におけるAIによる解剖学的ランドマーク教示は有用と思われた.
 今後さらに多くの教師データをAIに深層学習させることで,より正確なランドマーク教示が可能になると思われる.