講演情報
[AL-2]2023年奨励賞受賞者 大腸癌における新規標的遺伝子の同定と個別化医療の展望
井上 彬1,2, Frederick Robinson2, Rosalba Minelli2, Johnathon Rose2, Angela Harris3, Mary Sobieski4, Michael Peoples3, David Brunell4, Clifford Stephan4, Virginia Giuliani3, Angela Deem2, Yonathan Deribe2, David Menter2, Timothy Heffernan3, Andrea Viale2, Christopher Bristow3, Scott Kopetz5, Giulio Draetta2, Giannicola Genovese2, Alessandro Carugo2 (1.大阪急性期・総合医療センター消化器外科, 2.MDアンダーソンがんセンターゲノム医学, 3.MDアンダーソンがんセンターTRACTION platform, 4.テキサスA&M大学トランスレーショナルがん研究センター, 5.MDアンダーソンがんセンター消化器腫瘍内科)
【はじめに】
近年,個々の癌患者のゲノム情報に基づいた診断・治療を行う個別化医療(Precision Medicine)の研究開発が進んでいる.大腸癌では,RAS/BRAF,MSI/MMR,HER2,NTRK融合遺伝子など,薬剤に結び付くバイオマーカーが次々と開発され,治療成績が向上している.
【本研究の目的】
大腸癌に対する新たな治療標的遺伝子を同定し,個別化医療を推進すること.
【方法】
大腸癌患者の腫瘍サンプルからPDX(Patient-Derived Xenograft)マウスモデルを樹立した.癌の標的遺伝子200個を網羅したpooled shRNAライブラリーを用いたin vivoでの網羅的な機能ゲノムスクリーニングを行い,新たな治療標的遺伝子を同定した.さらに,この標的分子を制御する阻害剤の治療効果を大腸癌PDXマウスモデルで検証した.
【結果】
ゲノムスクリーニングにより,大腸癌に対する治療標的遺伝子としてXPO1を同定した.XPO1は核外輸送タンパクをコードする遺伝子である.XPO1阻害剤を大腸癌細胞株に投与するとDNA損傷とアポトーシスが誘導された.さらに,大腸癌のPDXマウスモデルにXPO1阻害剤を投与すると,腫瘍の増殖が抑制され,生存期間が有意に延長した.XPO1阻害剤の治療効果は,癌抑制遺伝子TP53に変異を有する大腸癌に対して特に顕著であった.
【結語】
TP53変異型の大腸癌に対する新規標的遺伝子としてXPO1を同定した.XPO1阻害剤は大腸癌に対して優れた抗腫瘍効果を示し,新規治療薬として期待される.
【今後の展望】
本研究の成果は『Gastroenterology』誌に掲載され,国際的にも高くご評価を頂きました(Akira Inoue et al, Gastroenterology, 161(1):196-210, 2021).海外ではXPO1阻害剤を用いた新規臨床試験が計画されています.本発表では,大腸癌の新規標的遺伝子の同定と個別化医療の展望について発表させて頂きます.
近年,個々の癌患者のゲノム情報に基づいた診断・治療を行う個別化医療(Precision Medicine)の研究開発が進んでいる.大腸癌では,RAS/BRAF,MSI/MMR,HER2,NTRK融合遺伝子など,薬剤に結び付くバイオマーカーが次々と開発され,治療成績が向上している.
【本研究の目的】
大腸癌に対する新たな治療標的遺伝子を同定し,個別化医療を推進すること.
【方法】
大腸癌患者の腫瘍サンプルからPDX(Patient-Derived Xenograft)マウスモデルを樹立した.癌の標的遺伝子200個を網羅したpooled shRNAライブラリーを用いたin vivoでの網羅的な機能ゲノムスクリーニングを行い,新たな治療標的遺伝子を同定した.さらに,この標的分子を制御する阻害剤の治療効果を大腸癌PDXマウスモデルで検証した.
【結果】
ゲノムスクリーニングにより,大腸癌に対する治療標的遺伝子としてXPO1を同定した.XPO1は核外輸送タンパクをコードする遺伝子である.XPO1阻害剤を大腸癌細胞株に投与するとDNA損傷とアポトーシスが誘導された.さらに,大腸癌のPDXマウスモデルにXPO1阻害剤を投与すると,腫瘍の増殖が抑制され,生存期間が有意に延長した.XPO1阻害剤の治療効果は,癌抑制遺伝子TP53に変異を有する大腸癌に対して特に顕著であった.
【結語】
TP53変異型の大腸癌に対する新規標的遺伝子としてXPO1を同定した.XPO1阻害剤は大腸癌に対して優れた抗腫瘍効果を示し,新規治療薬として期待される.
【今後の展望】
本研究の成果は『Gastroenterology』誌に掲載され,国際的にも高くご評価を頂きました(Akira Inoue et al, Gastroenterology, 161(1):196-210, 2021).海外ではXPO1阻害剤を用いた新規臨床試験が計画されています.本発表では,大腸癌の新規標的遺伝子の同定と個別化医療の展望について発表させて頂きます.