講演情報
[SP1-4]肛門科医の立場から
松島 小百合, 宮島 伸宜, 松島 誠 (松島病院大腸肛門病センター)
大腸肛門病学会のIIa(外科)と,IIb(肛門科)専門医の女性医師は,IIaが4.4%(IIa女性:66人,IIa総数:1500人)に対し,IIbが13.4%(IIb女性:51人,IIb総数:381人)と,IIaに比較しIIbの女性医師の割合は高い.なぜIIbの方が女性医師の比率が高いのか.それは肛門科が消化器外科に比較し働きやすい労働環境であるからと考える.IIb専門医の多くはクリニックで開業しており,私のような95床の肛門科専門の医療機関で勤めているのは特殊な例ではあるが,働きやすい労働環境の要因は①主治医制ではないこと②長時間労働を強いられることは無いこと③書類仕事の多くは医師事務補助や医事課が担っており医師は診療に集中できること④扱う手術は低難易度(痔核・痔瘻などの肛門疾患),中難易度手術(腹腔鏡下直腸固定術)であり,周術期合併症が少なく,手術時間が短いことなどである.さらに自身の場合は両親と2世帯住宅に住んでいるため,家族の協力体制もあって子育てをしながらでも常勤医を続けることが出来ている.一方,現在医療の現場で問題となっているのは消化器外科医の減少と働き方の問題である.消化器外科医の数を減らさないためにはあらゆる策が必要であるが,女性医師に限ると,出産や子育てで一時的にどうしても出産前と同じような働き方を継続できない時期がある.このタイミングであきらめて,消化器外科とは異なる道に進む女性医師をいかに減らすかは重要であると考える.現状の働き方で,歯を食いしばって産前産後も同じような労働環境で働き続けられる女性はスーパーマンであり,誰でも真似ができる存在ではないだろう.流動的にその時々のライフステージに合わせて職場や労働環境を変えて働き続け,最終的に子育てが落ち着いてから第1線に復活できれば,消化器外科医の減少が少しでも食い止められるのではないかと考える.そのためには所属学会を脱会しないことも重要である.専門医を取得しないと会費を支払い続けることに疑問を感じ脱会してしまう会員もおり,消化器外科医減少の一因となっているのではないか.脱会を引き留める一つの方法としては,外科系肛門科を選択した医師を排除することなく,日本消化器外科学会の「会員」であれば,新専門医制度において日本大腸肛門病学会の専門医を取得できるようになれば消化器外科学会の脱会を避けることが出来ると考える.女性医師が再度消化器外科医の一因として第一線に復帰する道筋を学会が仕組みとして作ることも重要であると考える.