講演情報
[SP1-1]当科における女性医師の働き方について
林 奈那1,2 (1.広島生活習慣病・がん健診センター, 2.ひろしま内視鏡内科クリニック)
【はじめに】近年国家試験合格者に占める女性の割合は30%台で推移しており,女性医師の割合は以前より増加しているが,不妊治療,出産,育児,子供の教育,介護などライフイベントによりキャリア中断する例も少なくない.しかし,内視鏡検査数の増加に伴い,検査に女性医師を希望する件数も増加したり,働き方改革で一人当たりの労働時間が減ったりしていることから,女性医師が辞めることなく仕事を続けられる環境作りをすることが今後必須である.【現状】広島大学消化器内科に入局した女性医師について,出産後の働き方は多い順に,(1)大学病院1日,外勤2コマの週3日程度勤務,(2)中核病院,専門施設で週3-5日非常勤勤務,(3)常勤勤務,(4)開業医(親・夫と共に),(5)退職,である.それぞれについて考察する.(1)メリットは勤務時間数が少ないが収入もある程度確保され,子供の教育の時間などが確保しやすい点である.内視鏡検査に関しても,少なくとも週1は確保されており技術の維持も可能である.デメリットとしては,大学病院は突然の休暇に対応できるが,外勤の場合は対応しにくいケースもある.夫や親の手助けや,病児保育があればよいがそれらが難しい場合もあるため,今後医局内での代替人員のバックアップがあれば望ましいという意見もある.(2)関連病院の1つの中核病院において復職後のキャリア支援を行っている施設があり,そこでは習熟度に合わせて一般検査から精査,治療(ESD,EMR)まで段階的にレベルアップして行われている.また,学術活動の指導も行われ,学会発表の機会も得ることができる.突然の休暇も100%可能で勤務時間もフレックスタイム制である.職場自体も非常勤女性医師の導入により結果的に人員が増え,内視鏡終了時間の短縮に繋がっており,働き方改革にもいい影響を与えている.デメリットとしては,責任ある地位への役職に就くことが難しい点である.(3)メリットは責任ある立場で働くことができる.デメリットは勤務時間が長いことである.私はこのケースであるが,産後すぐに常勤で働いているケースはほぼない.私自身は出産時期が遅かったため,その時点で5学会の専門医や学位をすでに取得しており,技術的にも一通りは身につけていた.産後1ヶ月半で職場復帰し,学術活動も含め出産前と同様に多くの出張をこなしていたが,これは主に親のサポートがあり可能であった.しかし医師14年目の第2児出産後は,長年関与していた国際共同研究が終了したこともあり,子育ての時間確保のため時短勤務ができ,なおかつ常勤勤務のできる職場を希望した.一般病院だとESDなどの治療に携わることもできるが,休日夜間の呼び出しに応じられなければ自分が治療し偶発症が起こった場合に直接対応できないことを自分自身が許容できなかったため,一般病院ではなく上下部内視鏡検査や外来治療も行なっている健診施設での常勤勤務を希望した.時短勤務ではあるが,内視鏡センター長として責任者としての仕事を行なっている.週1大学病院での勤務は継続し,最新の機器や手法を継続して学んでいたが,今年夫が内視鏡専門クリニックを開院することになったため,内視鏡センター長業務は継続するが大学病院は辞めて,クリニックで週1女性医師希望の大腸内視鏡検査を施行することとなった.また,子供が中学生以上になって子育てが一段落した女性医師が,(1)の非常勤形態から一般病院常勤を希望して変わるケースもある.(4)については家庭の事情でクリニック勤務を行なっている例がほとんどであった.(5)夫の転勤,海外赴任や介護に伴い退職するケースがあった.【まとめ】今回,広島大学消化器内科入局後の女性医師の働き方を紹介した.様々なロールモデルを見て自分の理想像を見つけることが望ましい勤務形態を見つける一助となる.なるべく早い時期から得意なサブスペシャリティを持つことで,職場が変わる場合においても役立つと考える.そのために後期研修医の時期に病院による格差が出ないようスキルアップを含めた研修プログラムのシステム作りを確立することも必要である.