講演情報

[EL]肛門外科医が学ぶべき形成外科的アプローチ―肛門部の再建に役立つ形成外科的な手術手技―

齋藤 昌美 (福島県立医科大学形成外科)
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肛門狭窄の治療を中心に、形成外科的なアプローチが有用と考えられる肛門部、会陰部、骨盤腔の再建について、実際の症例を提示しながら手術方法について報告したい。
肛門狭窄は、自由縁である肛門に生じた瘢痕拘縮である。瘢痕拘縮は皮膚や粘膜などの欠損が2次治癒することによって生じる。よって肛門狭窄の原因は組織欠損であり、根本的に治療するには、組織を補填する必要がある。演者は八子医院にて2021年12月から2025年8月までの3年9カ月間に、43名の肛門狭窄に対して前述の病態を踏まえた手術治療を行ってきた。原因は痔核術後(Whitehead肛門含)が28例、習慣性裂肛が15例であった。年齢は41~97歳。、腰椎麻酔33例、局所麻酔10例。術式は全例とも、V-Y皮弁に準じた皮下茎皮弁移植を行った。肛門狭窄部を切開すると六角形に近い皮膚粘膜欠損が生じる。それを四角に見立てて殿部に同じ大きさの皮弁をデザインする。皮弁採取部を被覆しやすくするために末梢に三角形を追加すると、皮弁は五角形となる。この五角形皮弁を皮下茎として欠損部へ移行させる。狭窄が高度な1例で2つの皮弁移植を要した。術後、全例とも狭窄は改善して、肛門を通過可能なブジーサイズは術前3~5号から術後は9~10号となった。術後合併症としては8例に皮弁採取部の創離開を生じたが、全例とも保存的に治癒した。肛門の再狭窄を生じた症例は認めない。
また前述した局所皮弁の血行動態を理解する上で有用となる殿溝皮弁についても報告する。肛門部、坐骨結節、会陰部に囲まれた皮膚は内陰部動脈から分岐する複数の皮膚穿通枝血管によって栄養される。この部位を皮下茎として殿溝に沿うように殿部~大腿後面へ大きな皮弁を作成することが可能である。茎を適宜深部へ剥離することにより、皮弁は骨盤腔へ容易に到達する。肛門狭窄の治療に利用する皮下茎皮弁の血行動態も殿溝皮弁に準じたものとなっているため、V-Y皮弁は肛門管の深部まで到達させることが可能である。
前記2つの皮弁を中心に、皮弁形成の基本や、皮弁法と皮膚弁移動術(SSG法)との相違やスキンタグの処理などについても提示したい。