講演情報

[O10-2]当科における肥満症例に対するロボット支援大腸手術の対策

井垣 尊弘, 眞部 祥一, 塩見 明生, 田中 佑典, 笠井 俊輔, 小嶋 忠浩, 森 千浩, 髙嶋 祐助, 石黒 哲史, 坂井 義博, 谷田部 悠介, 辻尾 元, 八尾 健太, 横山 希生人, 小林 尚輝, 山本 祥馬 (静岡県立静岡がんセンター大腸外科)
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【背景】肥満症例における大腸癌手術では、視野の確保や組織操作の難しさ、癒着や出血リスクの増加などにより手術難易度が高く、慎重な手技が求められる。当科においてはロボット支援手術を中心とした多角的な工夫により、肥満症例に対しても安全な手術を追求してきた。【目的】当科における肥満症例に対する大腸癌手術の短期成績を提示し、ロボット支援手術の手術動画を供覧する。
【対象、方法】肥満症例に対し、術中工夫として十分な頭低位、入念な小腸排除や開腹用ガーゼの活用、脂肪組織への愛護的な操作などの対策を実施してきた。また左側結腸授動では内側授動での層の同定が困難な場合に、下腸間膜動脈より頭側の下腸間膜静脈背側で内側授動を開始し正しい層を認識する、場合によっては外側アプロ―チを先行させるなど手術手順の工夫も行っている。
2018年4月~2025年3月に当科にて腹腔鏡手術(Lap)またはロボット支援手術(Ro)でS状結腸切除術もしくは高位前方切除術を施行した症例を対象とした。BMI≧25をObese群、BMI<25をnon-Obese群とし、Lap群、Ro群それぞれにおける短期成績(手術時間、出血量、術後在院日数など)を比較検討した。また、BMI群におけるLap群とRo群の短期成績を別途比較検討した。
【結果】non-Obese群はObese群と比較して手術時間 (non-Obese群vs Obese群:Lap群166分 vs 191.5分、p<0.001、Ro群: 177分 vs 185.5分、p<0.001}、および出血量(Lap群: 0ml (0-459) vs 0ml(0-991)、p<0.001、Ro群: 0ml (0-243) vs 0ml(0-320)、p<0.001)において有意に良好であった。Obese群におけるアプローチ別(Lap群 vs Ro群)の比較では、手術時間は同等であったが、Ro群において有意に出血量が少なく、CD≧1以上の術後合併症がRo群において有意に少なかった。
【結語】肥満症例であっても術中操作の工夫により安全な手術が可能であった。特にロボット手術は安定した術野確保と精緻な操作性により、肥満による手術時間や出血量への影響を軽減し得る有効な手段であると考えられた。