講演情報

[O10-5]肥満症例に対するロボット支援腹腔鏡下結腸手術~ロボット手術の有用性と臨床的意義~

田子 友哉, 渡邉 賢之, 水谷 久紀, 筋野 博喜, 福島 元太郎, 久保山 侑, 笠原 健大, 真崎 純一, 永川 裕一 (東京医科大学消化器・小児外科学分野)
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【背景】肥満症例は,視野確保や器械操作の制限,脆弱な脂肪組織への対応,術中出血リスクの増加など,腹腔鏡手術での技術的困難さや合併症の増加と関連する.こうした課題に対しロボット手術では,肥満症例で有用な内側アプローチにおけるロボット鉗子の優れた安定性は親和性が高く,また,術野展開鉗子の他に2本の助手鉗子も使用可能といった利点がある.さらに当院では,体腔内吻合や,把持・切離・止血と多用途に使用可能なDouble bipolar法を大腸領域でも症例に応じて導入している.今回,肥満症例におけるロボット手術の安全性および有用性を明らかにすることを目的とした.
【方法】2022年8月から2025年3月までに当院で施行されたロボット支援下結腸切除症例を対象とした.傾向スコアマッチングにより背景を揃え,正常体型(BMI<25)の患者(N群)と肥満(BMI≧25)の患者(O群)に分けて手術短期成績を比較した.
【結果】対象は209例で正常患者166例と肥満患者43例であった.術式の内訳は,ICR/PCR(A)/RHC/PCR(T)/LHC/PCR(D)/SCR/Hartmann/結腸全摘=64/15/33/7/13/7/58/9/3例であった.年齢,性別,術式の左右,手術難易度の高低(横行結腸が切除に含まれる術式を高難易度)を共変量として傾向スコアマッチングによりN群およびO群それぞれ39例が抽出された.手術成績は,手術時間(207 vs.239 min, p=0.055),コンソール時間(137 vs.164 min, p=0.146),出血量(18 vs.29 ml, p=0.180),D3郭清(23 vs.27例, p=0.479),体腔内吻合(11 vs.14例, p=0.628),conversion(0 vs.4例, p=0.115)といずれも有意差は認めなかった.病理学的因子では,採取リンパ節数(19 vs.18個, p=0.332),PM(75 vs.76 mm, p=0.375),DM(70 vs.60 mm, p=0.057)にも有意差はなかった.術後成績についても,SSI(0 vs.3例, p=0.240),縫合不全(0 vs.0例),Clavien-Dindo分類2以上合併症(5 vs.5例, p=1.000),全合併症(8 vs.9例, p=1.000) と有意差はなかった.
【結論】肥満症例におけるロボット支援下結腸切除は,短期成績において正常症例と遜色なく安全に施行されていた.当院の工夫や成績とともに,その有用性および臨床的意義について報告する.