講演情報

[O10-6]BMI>30以上の肥満患者におけるロボット支援直腸切除術の工夫と現状

田中 裕人, 内間 恭武, 鹿川 大二郎 (中部徳洲会病院消化器外科)
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【背景】直腸に対する手術アプローチは精緻な手術が可能となるためメリットは大きい.しかし肥満患者での骨盤内操作の難しさはロボット技術のみでは解決できない問題である.特に沖縄県は食生活の欧米化や車社会といった背景から肥満が社会問題となっており日々の診療の中でもBMI30を超える肥満患者に遭遇することも珍しくない.
【手技と工夫】
手術手技と工夫については以下のことを術者及び助手と協力し行っている.
体位固定確実に行い,体位変換を躊躇なく実施し小腸排除はガーゼを用い妥協せずに行っている.肥満患者では容易に解剖を誤認しうるため逐一解剖学的構造物を確認,チームで共有する.安全性の観点から視野外で鉗子先端が動かないように細かいカメラ操作を通常より意識する.内側アプローチは小腸排除が主に問題となるが切開した腹膜や鉗子シャフトを利用し小腸を排除することで同一の展開で可能な限り広く剥離を行う.それでも展開に難渋する場合はsmall triangulationを意識し,少しずつ術野を進める.展開に助手が必要な場合は助手用portの追加を行う.骨盤内操作では助手による牽引や吸引を最大限に活用する必要があり,助手からもロボットアームの操作について術者にフィードバックを行うように指導している.特に男性の肥満症例では直腸後腔は狭くカメラやアームの挿入に難渋しやすくカメラ汚染による手術の中断が起こりやすい.そのため温存すべき構造物を確実に確認した上で前方,左右を優先的に剥離する.また経肛門アプローチを使用する場合もある.
【検討】
当院で2022年11月から2025年3月までにロボット支援直腸切除術を施行したBMI 30以上の症例について後方視的に解析を行った.
【結果】BMI 30以上のロボット支援直腸癌手術は,11例認めた.男性10例,女性1例であった.BMIの中央値は33であった.腫瘍の局在(RS/Ra/Rb)は6/3/2例,手術時間中央値は323分,出血量中央値は50mLであった.術後合併症は7例で認めたがClavien-Dindo Grade3以上は1例であった.pStage(I/Ⅱ/Ⅲ/Ⅳ)は4/3/3/1例であった.
【結語】肥満患者におけるロボット支援直腸癌手術の文献的考察を行い,当院の手技に関する工夫を供覧する.