講演情報

[O11-1]当院における切除不能進行再発大腸癌に対する免疫チェックポイント阻害薬の使用経験

鈴木 友里子1,3, 佐久間 洋寿1, 佐藤 智大1,3, 髙橋 龍平1,3, 金生 直哉1,3, 石野 淳1, 牛尾 純2, 大平 弘正3 (1.星総合病院消化器内科, 2.昭和医科大学江東豊洲病院消化器センター, 3.福島県立医科大学消化器内科学講座)
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【背景】免疫チェックポイント阻害薬(ICI)であるペムブロリズマブ(PEM)は,高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)の切除不能進行再発大腸癌に対する一次治療として推奨されている.MSI-H大腸癌に対するPEMと標準治療を比較する第III相試験ではPEMでの生存期間の有意な延長が示されており,一次治療で使用されていない場合は二次治療以降でもICIを用いた治療が推奨される.当院では現在までに,3例のMSI-H大腸癌に対しPEMを使用した.【症例1】92歳女性.直腸癌術後再発,30 mm大の転移性リンパ節腫大あり,原発巣はMSI-H,RAS野生型,BRAFv600E野生型であった.一次治療としてPEMを開始し,最良治療効果は部分奏効(PR)で,12コース実施した現在もPRを維持している.【症例2】88歳女性.回盲部癌,膵転移あり,原発巣はMSI-H, RAS野生型, BRAFv600E野生型であった。一次治療としてPEMを開始し,最良治療効果は完全奏功(CR)で,10コース実施した現在もCRを維持している.【症例3】68歳男性.直腸癌, 傍大動脈リンパ節転移あり,RAS野生型,EGFR陽性であった.SOX+パニツムマブ,FOLFIRI+ラムシルマブ, レゴラフェニブ,TAS-102,TAS-102+ベバシズマブを施行したが,いずれも進行(PD)の判定となった. 傍大動脈リンパ節からのEUS―TAでMSI-Hを確認し,六次治療としてPEMを開始した.最良治療効果はPRであったが,7コース実施した時点でPDとなり,全身状態増悪がみられ化学療法は終了,約4か月後に死亡した.3症例とも高齢者ではあったが, PEMによる有害事象は認めなかった.【考察】当院では,一次治療としてのPEMの治療効果は2症例ともにPR以上の奏効を得ており,有害事象なく経過した.現在,すべての大腸癌患者に対してMSI検査が推奨されているが,MSI-H大腸癌の頻度はStage IVで4%と報告され,非常に少数である.当院でも少数の治療経験に留まっており,今後更なる症例の蓄積が望まれる.