講演情報

[O12-2]当科における局所進行直腸癌に対する治療成績

金子 由香, 谷 公孝, 前田 文, 腰野 蔵人, 二木 了, 番場 嘉子, 小川 真平, 山口 茂樹 (東京女子医科大学消化器・一般外科)
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【背景】局所進行直腸癌は手術の難易度が高く、再発率も高い。近年局所再発や遠隔転移再発の制御を目的とし集学的治療としてTotal neoadjuvant therapy(TNT)の有用性が報告されつつある。また術前治療後に臨床的完全奏功(Clinical complete response: cCR)が得られた症例に対するnon-operating management(NOM)により臓器温存が期待されている。【目的】今回当院における局所進行直腸癌の治療成績について報告する。【対象と方法】当科では局所進行直腸癌に対し2007年までは術前加療は行っておらず、2008年から臨床試験として術前CRTを導入していたが、CRT施行症例で遠隔転移再発率が高いことから2021年から再発ハイリスク症例(cT4,CRM≦1㎜,cN2,EMVI+)、または歯状線から近く肛門の温存が不可能で術前加療を希望する症例を中心にTNTを導入した。今回TNT導入後の2021年から2023年3月までのcStageⅡ・ⅢのRSを除く局所進行直腸癌を対象として治療成績を検討した。【結果】術前治療なしの手術単独群(以下S群)が52例、TNTを施行した群(以下TNT群)は17例であった。腫瘍部位はS群Ra:Rb=31:21、TNT群でRa:Rb=4:13、cT因子はS群T1:T2:T3:T4=5:5:32:10、TNT群T2:T3:T4=1:9:7、cN因子はS群N0:N1:N2:N3=33:15:4:0、TNT群N0:N1:N2:N3=2:5:6:4であった。Grade3(CD分類)以上の手術合併症はS群3.8%TNT群28.6%でTNT群に多かった。再発率はS群26.9%、TNT群11.8%であった。S群は1例の側方リンパ節再発を除き全例遠隔転移再発であり、TNT群は1例は局所再発、1例は局所+遠隔転移再発であった。また、TNT群では治療後にCRを得られた症例が5例(29.4%)あり、そのうち2例はNOMを選択し臓器温存が可能であった。【結論】TNTはより進行した症例で行っており患者背景は異なるが、TNT群はS群と比較し再発率が低かった。S群は再発率が26.9%と高く、ほぼ全例が遠隔転移再発であったことから、術前後の集学的治療の個別化において検討が必要と考えられた。また、TNT群ではCR率が29.4%と良好であり、臓器温存が期待された。