講演情報
[O13-1]Ⅳ型クローン痔瘻を単純化し、ダルバドストロセルの投与ができた2例
渡部 晃大, 加川 隆三郎, 吉村 直生, 伊藤 孝, 花田 圭太, 武田 亮二, 松下 貴和 (洛和会音羽病院外科)
緒言:ダルバドストロセル(Darvadstrocel, 以下DVS)は、成人の皮下脂肪組織から作成された非活動期または軽症の活動期クローン病患者の複雑痔瘻を治療する薬剤である。
今回、骨盤直腸窩膿瘍を形成したⅣ型クローン痔瘻に対してsetonゴムの留置を行うことで浅外肛門括約筋レベルの痔瘻に変換した症例に対してDVSの投与を行い、肛門病変の寛解を得られた2症例を経験したため、報告する。
症例1:18歳男性。17歳時にクローン病と診断された。内科的治療を開始するも、肛門病変のコントロールが不良であり、当科紹介となった。骨盤直腸窩膿瘍を形成する6時原発のⅣ型痔瘻の診断で、病勢コントロール目的のseton手術を行った。術7ヶ月後に骨盤直腸窩膿瘍は完全に消失し、浅外肛門括約筋レベル単純な痔瘻となった。腸管病変のコントロールが良好であり、setonゴムの抜去希望が強かったため、DVSを投与した。DVS投与後1ヶ月後に肛門部の腫脹があり、切開で漿液性の排液を認めたが、その後は再燃なく、DVS投与後4ヶ月で肛門症状は消失した。DVS投与後1年、痔瘻の再発は認めていない。
症例2:37歳男性。26歳時にクローン病と診断された。内科的治療で腸管病変のコントロールは良好となったが肛門病変のコントロールが不良であり、当科紹介となった。骨盤直腸窩膿瘍を形成する5時原発のⅣ型痔瘻の診断で、病勢コントロール目的のseton手術を行った。術5ヶ月後に骨盤直腸窩膿瘍は完全に消失し、浅外肛門括約筋レベル単純な痔瘻となった。setonゴム留置に強い嫌悪感があり、抜去希望が強かったため、DVSを投与した。DVS投与直後に振戦を認めたがすぐに消失し、術翌日に退院した。その後はすみやかに肛門部からの排膿は減少し、DVS投与後2ヶ月で排膿や疼痛といった症状は消失した。DVS投与後6ヶ月、痔瘻の再発は認めていない。
結語:今回、初診時にはIV型痔瘻であったが、seton手術で浅外肛門括約筋レベルの痔瘻に変換し、DVS投与に適した症例を2例経験した。setonゴムの長期的留置に強い抵抗感を示す患者もおり、DVSは難治性クローン痔瘻の寛解を目指す良い選択肢であると考えられた。
今回、骨盤直腸窩膿瘍を形成したⅣ型クローン痔瘻に対してsetonゴムの留置を行うことで浅外肛門括約筋レベルの痔瘻に変換した症例に対してDVSの投与を行い、肛門病変の寛解を得られた2症例を経験したため、報告する。
症例1:18歳男性。17歳時にクローン病と診断された。内科的治療を開始するも、肛門病変のコントロールが不良であり、当科紹介となった。骨盤直腸窩膿瘍を形成する6時原発のⅣ型痔瘻の診断で、病勢コントロール目的のseton手術を行った。術7ヶ月後に骨盤直腸窩膿瘍は完全に消失し、浅外肛門括約筋レベル単純な痔瘻となった。腸管病変のコントロールが良好であり、setonゴムの抜去希望が強かったため、DVSを投与した。DVS投与後1ヶ月後に肛門部の腫脹があり、切開で漿液性の排液を認めたが、その後は再燃なく、DVS投与後4ヶ月で肛門症状は消失した。DVS投与後1年、痔瘻の再発は認めていない。
症例2:37歳男性。26歳時にクローン病と診断された。内科的治療で腸管病変のコントロールは良好となったが肛門病変のコントロールが不良であり、当科紹介となった。骨盤直腸窩膿瘍を形成する5時原発のⅣ型痔瘻の診断で、病勢コントロール目的のseton手術を行った。術5ヶ月後に骨盤直腸窩膿瘍は完全に消失し、浅外肛門括約筋レベル単純な痔瘻となった。setonゴム留置に強い嫌悪感があり、抜去希望が強かったため、DVSを投与した。DVS投与直後に振戦を認めたがすぐに消失し、術翌日に退院した。その後はすみやかに肛門部からの排膿は減少し、DVS投与後2ヶ月で排膿や疼痛といった症状は消失した。DVS投与後6ヶ月、痔瘻の再発は認めていない。
結語:今回、初診時にはIV型痔瘻であったが、seton手術で浅外肛門括約筋レベルの痔瘻に変換し、DVS投与に適した症例を2例経験した。setonゴムの長期的留置に強い抵抗感を示す患者もおり、DVSは難治性クローン痔瘻の寛解を目指す良い選択肢であると考えられた。