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[O13-4]Parks分類における痔瘻の進展経路は解剖学的構造のどこを指すのか

室生 暁1, 中島 康雄2, 秋田 恵一1 (1.東京科学大学臨床解剖学分野, 2.森山記念病院大腸肛門外科)
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【背景】痔瘻の分類として広く用いられているParks分類は、瘻管の走行を肛門括約筋との関係により4型に分類しており、臨床における診断や術式選択において重要な指標となっている。そのうち「括約筋間(intersphincteric)」は、内肛門括約筋と外肛門括約筋の間を意味するが、具体的にどの解剖学的構造に該当するのかについては、明確な共通認識が得られていない。我々はこれまでの肛門管に関する解剖学的研究において、括約筋間を走行する縦走筋やその周囲の構造を組織学的に明らかにしてきた。本研究では、Parksの原典の記述を参照しつつ、最新の研究結果を用いて、Parks分類で示される各型が現代の解剖構造のどこを通っているのかを再検討した。
【方法】解剖実習体から肛門管の組織標本を作成し、筋層構造を観察した。
【観察所見】肛門管の組織像では、内肛門括約筋も外肛門括約筋も肛門軸に対して輪走する明瞭な筋束を形成し、筋束と筋束の間には疎性結合組織で埋められた間隙が観察された。そして、内肛門括約筋と外肛門括約筋の間に縦走筋が走行していた。従来均一な組織と考えられていた肛門管の縦走筋は、平滑筋組織の密性領域と疎性領域を含んでいた。密性領域は縦走する束状構造を形成し、その周囲や筋束間を疎性の平滑筋が取り囲んでいた。密性の束状縦走筋は下方で漸減し、疎性縦走筋は細い線維に枝分かれしながら外肛門括約筋の筋束間を貫き皮下および坐骨直腸窩へ抜けていた。それに伴い、縦走筋の下方において、内肛門括約筋と外肛門括約筋の間に、まばらな平滑筋と疎性結合組織および脂肪で埋められた疎なスペースが観察された。
【Parks分類との比較検討】Parksは括約筋間に膿瘍の溜まりを描いており、この膿瘍が溜まる場所というのが、縦走筋の下方の疎なスペースではないかと考えられた。Parksの1型~4型までの痔瘻の各進展経路は、(原典では詳細は触れられてはいないが)筋束の間の間隙および縦走筋の疎性領域を通った進展として説明できるのではないかと考えられる。