講演情報

[O13-6]肛門周囲膿瘍、痔瘻症例におけるIBD合併症例の検討

植田 剛1, 中本 貴透1, 佐井 壯謙1, 定光 ともみ2 (1.佐井胃腸科肛門科, 2.南奈良総合医療センター外科)
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はじめに:肛門病変先行例ではIBD診断困難例や治療方針に難渋することもある。今回、肛門周囲膿瘍、痔瘻症例を集積、IBD合併の実態や治療方針を検討した。
対象と方法:対象は2023年1月〜2024年12月の間に当該施設で診療した341例(肛門周囲膿瘍216例、痔瘻手術198例)。内視鏡施行率、年齢別IBD合併率、診断経緯、治療内容など検討した。膿瘍では、IBD合併を問わず、触診とUSで膿瘍範囲の同定と十分な開放を行った。CD潰瘍性病変が一次口の際は同部にシートンを留置、膿瘍は十分に開放した。痔瘻症例は、IBD合併を問わず前側方は括約筋温存を、後方は開放術式を行った。内視鏡検査は、膿瘍には適宜施行し、痔瘻術前に全例でS状結腸以深の観察を施行した。
結果:年齢中央値は41歳(0-92)、男:女 287:54。IBD合併は、CD新規診断7例、CD既診断3例、UC既診断2例。IBD合併は0代0/3、10代6/16(CD新規6)、20代4/56(CD新規1、CD既2、UC既1)、30代2/80(CD既1、UC既1)、40代1/75(CD既1)、50代0/55、60代0/32、70代0/15、80代0/8、90代0/1。内視鏡施行率は228/341(66.9%)で、0代0/3、10代11/16、20代34/56、30代61/80、40代52/75、50代38/55、60代19/32、70代10/15、80代3/8、90代0/1。CD新規のうち6例は特徴的肛門病変からCSを行い確定診断となった。潰瘍による肛門痛でBio導入1例、3例で腸管病変もありBio 導入、肛門も寛解した。1例は術前にCD診断はなく、通常再発痔瘻の判断でcoringを行い創傷治癒遅延なし、術後1.5年のCSでCD診断となった。UC既診断は切開排膿1例、lay open1例に行い、UC治療変更なし。根治術症例はCD、UCとも創傷治癒遅延なし。
結語:肛門周囲膿瘍、痔瘻では特に10代でIBD合併を多く認めた。特徴的な肛門病変を合併しない症例では全例に精査を行っておらず、通常通りの根治術・処置を施行していた。肛門の特徴的所見、難治創、再燃などでは精査と通じてIBD診断につながる可能性があり、早期診断と治療介入がIBDの経過に寄与する可能性が示唆された。