講演情報
[O14-5]大腸癌遠隔転移症例における原発巣の腫瘍先進部病理学的因子の抗がん剤治療効果予測に関する検討
田中 正文, 山田 一隆, 佐伯 泰愼, 福永 光子, 米村 圭介, 水上 亮佑, 辻 順行, 高野 正太 (大腸肛門病センター高野病院)
【目的】遠隔転移を有する大腸癌症例の腫瘍先進部の腫瘍分化度(budding、低分化胞巣:PDC)と線維性間質反応(DR)、神経浸潤(ni)に着目し、遠隔転移巣に対する抗がん剤治療における治療効果予測が可能か検討する.
【対象】2004-2021年に切除不能な遠隔転移を伴う転移再発大腸癌と診断され、原発巣のKRAS遺伝子検査を行った119例.
【方法】各種臨床病理学的因子に加え、腫瘍先進部PDC(G1-3)、budding(G1-3)、ni、DR(mature,intermediate,immature)を検索し、遺伝子変異と癌の形態学的特徴との関連や治療効果との関連について検討した.
【結果】1.野生型34例(53%)に抗EGFR抗体薬が投与され、PR16例、PD18例であった.PDC、ni、DRではそれぞれの割合に差を認めなかったが、buddingではG1(6例)で全例PR、G2ではPR10例・PD5例、G3(13例)は全例PDと有意差を認めた(p=0.001)。全体の奏効率は41%で,budding3 を除いたbudding1-2群では奏効率が67%と上昇した.2. KRASを測定した転移再発大腸癌 119例のうち46例(39%)にBevacizumabが投与され、PR16例、PD30例であった.ni、buddingではそれぞれの割合に差を認めなかったが、DRではMature(8例)でPR5例・PD3例、IntermediateではPR11例・PD18例、Immature(9例)は全例PDと有意差を認めた(p=0.001)。また、PDCではPDC G1(7例)でPR5例・PD2例、PDC G2 (16例)ではPR4例・PD12例、PDC G3 (23例)はPR4例・PD19例と有意差を認めた(p=0.02)。
【結語】1.大腸癌同時性肝転移における予後規定因子は、化学療法なし、根治度C、肝転移Grade C、level分類3で、予後を反映しており、 CurBを達成してもlevel3症例の予後は不良で、強力な補助化学療法(分子標的薬など)が必要と考えられた。
2.野生型で腫瘍先進部がbuddingG3症例では、遠隔転移巣に対する抗EGFR抗体薬治療が奏効しない可能性が示唆された。
3.腫瘍先進部の線維性癌間質反応がImmature・低分化胞巣 G3の症例には、遠隔転移巣に対するBevacizumab治療が奏効しない可能性が示唆された。
病理学的因子による細分類が薬剤選択の一助となり、奏効率を上げる可能性があると考えられた。
【対象】2004-2021年に切除不能な遠隔転移を伴う転移再発大腸癌と診断され、原発巣のKRAS遺伝子検査を行った119例.
【方法】各種臨床病理学的因子に加え、腫瘍先進部PDC(G1-3)、budding(G1-3)、ni、DR(mature,intermediate,immature)を検索し、遺伝子変異と癌の形態学的特徴との関連や治療効果との関連について検討した.
【結果】1.野生型34例(53%)に抗EGFR抗体薬が投与され、PR16例、PD18例であった.PDC、ni、DRではそれぞれの割合に差を認めなかったが、buddingではG1(6例)で全例PR、G2ではPR10例・PD5例、G3(13例)は全例PDと有意差を認めた(p=0.001)。全体の奏効率は41%で,budding3 を除いたbudding1-2群では奏効率が67%と上昇した.2. KRASを測定した転移再発大腸癌 119例のうち46例(39%)にBevacizumabが投与され、PR16例、PD30例であった.ni、buddingではそれぞれの割合に差を認めなかったが、DRではMature(8例)でPR5例・PD3例、IntermediateではPR11例・PD18例、Immature(9例)は全例PDと有意差を認めた(p=0.001)。また、PDCではPDC G1(7例)でPR5例・PD2例、PDC G2 (16例)ではPR4例・PD12例、PDC G3 (23例)はPR4例・PD19例と有意差を認めた(p=0.02)。
【結語】1.大腸癌同時性肝転移における予後規定因子は、化学療法なし、根治度C、肝転移Grade C、level分類3で、予後を反映しており、 CurBを達成してもlevel3症例の予後は不良で、強力な補助化学療法(分子標的薬など)が必要と考えられた。
2.野生型で腫瘍先進部がbuddingG3症例では、遠隔転移巣に対する抗EGFR抗体薬治療が奏効しない可能性が示唆された。
3.腫瘍先進部の線維性癌間質反応がImmature・低分化胞巣 G3の症例には、遠隔転移巣に対するBevacizumab治療が奏効しない可能性が示唆された。
病理学的因子による細分類が薬剤選択の一助となり、奏効率を上げる可能性があると考えられた。